産業春秋/怒濤の秋

(2021/11/1 05:00)

 「寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ」。詩歌の世界で、秋は寂しさを象徴する。新古今集の寂蓮法師の名歌は常緑樹のマキが立ち並ぶ山にも寂寥を見いだす。

 新古今は西行法師、藤原定家にも秋の夕暮れの歌があり、「三夕」として知られる。いずれも寂しさ・静けさが主題で、1000年以上にわたり日本人に根づいてきた感覚だ。

 10月4日の岸田文雄首相による衆院解散表明から1カ月足らず。政界は静けさどころか、怒濤(どとう)のような騒がしい選挙戦を繰り広げた。それでも伊吹文明元議長や大島理森前議長ら長老の政界引退や、有力な前議員の落選には寂しさが漂う。

 一方で、少しも寂しくない著名な秋の歌がある。「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」。詠み人は平安中期、摂関政治の全盛期を極めた藤原道長。ただ、その摂関政治も後に院政に取って代わられた。権力基盤を固めても支持を失えば危うい。

 勉学やスポーツに好適な秋が過ぎ、予算編成の冬が来る。「秋山に霜降り覆い木の葉散り年は行くとも我れ忘れめや」(柿本人麻呂・万葉集)。国民が経済再生の願いを付託したのを忘れず、大きな実りを生んでほしい。

(2021/11/1 05:00)

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