社説/産業保安のスマート化 リスクの増大に備える覚悟持て

(2021/11/9 05:00)

スマート保安を導入する意義は、単にテクノロジーを採用することではない。自社にとって最適な保安のあり方を自ら追求し、責任を持って保安レベルを向上させることにある。

経済産業省が電力、都市ガス、化学プラントなど重要設備の保安制度を見直す作業を進めている。電気事業法やガス事業法などの各業法で規定された一律的な規制から、リスクに応じて規制の強度を変え、柔軟でメリハリのある制度へと移行するというもの。

IoT(モノのインターネット)やセンサー、飛行ロボット(ドローン)など、技術革新の成果を生かした「保安のスマート化」を加速し、人手に頼る既存の仕組みから、より保安力を高めることを目指す。同時に新しい保安技術を駆使して、自立的に高度な保安が行える事業者を認定。検査時期を柔軟に設定したり、行政への事前の届け出を廃止したりすることで、事業者の負担を軽減する措置も導入する。

当面認定事業者として想定するのは、電力の発電(原子力発電設備を除く)・送電事業者、都市ガスの製造・導管事業者、高圧ガスを扱う石油・化学プラント設備を保有する事業者。経産省は電気事業法など関連業法の改正案を2022年開催の通常国会に提出する方針だ。早ければ23年度にも最初の認定事業者が誕生する。

先進技術を保安に活用する考え方は積極的に進めるべきだ。保安人材の高齢化や技術の承継が課題となっている。高所にある送電線やガスホルダーの保安を人が行うには限界もある。プラント内部の劣化を目視や現行の点検だけでは見抜けない場面も増えている。

課題は実効性の担保である。認定事業者は、自主保安において重い責任を負うという自覚が求められる。

保安の現場では、設備の老朽化や多様化に加え、サイバーセキュリティーへの対応など新たなリスクが増大している。保安を支えるガバナンスをどう構築するか。政府は事業者と十分に意見を交わしてもらいたい。

(2021/11/9 05:00)

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