社説/増える工場火災 事業継続の視点で対策強化を

(2022/3/4 05:00)

工場火災が増加傾向にある。2月11日に発生した三幸製菓荒川工場(新潟県村上市)の火災では6人が死亡。企業はコロナ後の繁忙期に備え、従業員の安全や事業継続の視点から火災リスクを総点検しておきたい。

村上市消防本部は2020年9月に立ち入り検査を実施。消火器収納部の赤色表示灯の点灯不良、火災報知器の作動不良、物品存置による避難の妨げなど6項目の不備を指摘していた。

消防本部は三幸製菓から提出された改修計画が正しく実行されているか現地で確認しておらず、未改修のまま放置されていた可能性がある。市の規定に確認の義務付けがない。

24時間操業でも夜間やアルバイトの避難訓練は行っておらず過去にボヤを繰り返していたことも判明している。村上市に限らず自治体消防は「ヒヤリ・ハット」が多発している企業への監視体制を強化してほしい。

消防庁によると、15年を境に工場火災の件数は増加傾向にある。熟練者の高齢化や退職が加速する中で「火災リスクに気付く姿勢や技能の継承が不十分なのでは。現場頼みの対策は限界にきている」といった専門家の指摘もある。

生産拠点が限られる中小企業にとって工場火災は、生産停止による業績悪化という直接的被害だけでは済まないケースもある。サプライチェーンが混乱をきたせば取引先や顧客の信頼を失い企業の存続に関わる。

地震や風水害に比べリスク管理の優先度が低い企業も少なくない。消防法や建築基準法の要件を満たしてさえいれば安全を担保できるとは限らない。初期消火に効果があるスプリンクラーの設置は消防法令上の義務はなく企業の判断に任せている。

消防計画の作成や防火管理者の選任は、企業の義務である。しかし、形式だけになっていては社員の安全は守れない。火災を事業継続計画に位置付け、平時から設備更新や避難訓練、火災保険などの手段を駆使し、リスクの最小化や早期復旧が図れる体制を整えたい。肝心なのは経営者の姿勢だ。不断の改善努力で実効性を高めてほしい。

(2022/3/4 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン