産業春秋／新入社員

４月。多くの職場で新しい仲間を迎えた。インターネットや会員制交流サイト（ＳＮＳ）に慣れ親しみ育ってきたソーシャルメディア世代の行動生態に、驚きや戸惑いを感じることは少なくない。

固定電話をかけたことがない。必要性を感じない集まりには参加しない。だが、世代間ギャップはいつの時代も同じ。むしろ彼ら・彼女らがどんな社会環境で育ってきたのか、思いを巡らせることで価値観が形成されてきた背景が見えてくる。

長期低迷から脱却できない日本経済。デジタル技術の進展で「つながる」ことは容易になった一方で、経済は依然、成長軌道を描けずにいる。物質的な豊かさや一律の成長志向と一線を画す姿は、日本経済の姿と重なる。

加えてコロナ禍での制約。多くの出会いや、その後の人生を左右する出来事に彩られるはずの青春まっただ中、諦めなければならなかったことを数えながら過ごす姿に胸が痛む。

それでも自分なりに折り合いを付けながら、新たな一歩を踏み出した。彼ら・彼女らが抱く価値観から、これからの社会のニーズを占えないだろうか。新たな仲間の声に耳を傾け、これを掘り起こすことでビジネスチャンスにつながるかもしれない。