社説/平和秩序守る正念場(下)「中立国」見極め、新枠組みを

(2022/4/13 05:00)

 中印や東南アジア諸国連合(ASEAN)などの新興国の多くは「中立」を掲げ、ロシアへの経済制裁に加わらない。日米欧は各国の事情も勘案した新たな国際(平和)秩序の枠組みをいかに築くのか、困難な作業だが解を見いだしたい。

 ロシアは孤立しなかった。同国の国連人権理事会の理事国資格を停止する決議で、193カ国のうち賛成が93カ国だったのに対し、反対・棄権は82カ国と大差はなかった。ロシア軍によるウクライナ民間人虐殺が報じられた直後でも、国際社会は一つにまとまらなかった。

 ASEAN各国はタイを除いて植民地時代を経験し、第二次世界大戦後に独立した。西側か東側かといった二者択一でなく、非同盟・中立を貫いて経済成長してきた。ASEANの輸出相手先の1、2位が中国と米国だ。ロシアとの貿易は少ないが、ロシアの制裁報復が自国に波及することを警戒する。

 ASEAN10カ国に日中韓、豪州、ニュージーランドを加えた15カ国が東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)を形成する。巨大経済圏で連携するASEAN各国だが、経済を武器にした連携には加わらないことを、新たな国際秩序づくりでは留意する必要がある。

 ただインドは中立国ながら大国として国際秩序を守る責任があろう。インドのモディ首相は12日(日本時間)のバイデン米大統領とのオンライン会談で、軍事・エネルギー面でのロシア制裁への言及はなく、両国は今後も協議を継続するという。

 インドはロシアがウクライナに侵攻して以降、安価なロシア産原油の輸入を増やしている。バイデン大統領との協議を通じ軌道修正されることを期待したい。ロシアとウクライナの両大統領に直接会談を提案した大国らしい言動も継続してほしい。

 台湾有事が発生した場合、中国に対する経済制裁は、中立国によって骨抜きとなるのか。見て見ぬふりの中立国ならまだしも、侵略国に加担する中立国も存在する。中立国を見極めつつ、日米欧は新たな秩序の枠組みを模索する胆力が問われる。

(2022/4/13 05:00)

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