社説/大国経済の行方(上)米、物価抑制と景気両にらみを

(2022/5/3 05:00)

 米国経済の最大の懸念は、約40年ぶりという歴史的な物価上昇だ。米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めによる“インフレ退治”に躍起だが、引き締めが行き過ぎると経済を減速させるリスクがある。経済減速を理由に、11月の米中間選挙でバイデン政権の基盤が揺らげば、中ロに付け入る隙を与えるだけにFRBには慎重な判断が求められる。

 物価上昇の要因は、深刻な人手不足と食品・エネルギー価格の高騰だ。人手不足は、コロナ禍で失業(離職)した労働者の復職が鈍いことが影響している。職場感染への警戒や、コロナの影響を受けやすい飲食・小売り・物流などサービス業への復職を回避する動きなどが背景にある。安全・高収入の職場を選別する傾向が強まり、人材のミスマッチも起きている。

 人手不足を解消するための賃上げが製品価格に転嫁され、さらにウクライナ情勢に伴う食品・エネルギー価格の高騰が加わり、米国の物価が著しく高騰している。3月の消費者物価は前年同月比で8・5%上昇し、約40年ぶりの高水準になった。FRBが金融引き締めに動くのは当然の判断といえよう。

 今後の焦点は人手不足の動向だ。3月の非農業部門雇用者数は前月比で43万人増え、雇用が改善したようにも映る。だが楽観視すべきなのか、構造的な人手不足は長期化すると見るべきなのか、判断は難しい。前者なら、過度な金融引き締めは必要以上に景気を冷やすことになり、後者なら有効となるだろう。

 他方、米国の3月の個人消費支出は前月比0・2%増の微増にとどまり、1月の同2・7%増を下回った点が気になる。足元の米国経済は堅調だが、長引くインフレで景気の先行きに悲観的になっている可能性があるからだ。需給バランスで物価が落ち着く方向にあるのなら、金融引き締めの手綱を緩めたい。

 米FRBは3、4の両日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で一段の金融引き締めに動く見通しだ。物価上昇を抑えつつ経済を急激に減速させない難しいかじ取りが求められる。

(2022/5/3 05:00)

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