社説/東日本大震災12年(上)真の復興へ「風化」「風評」に抗う

(2023/3/9 05:00)

2万2000人を超える死者・行方不明者を出した東日本大震災の発生から11日で12年になる。犠牲者の冥福を祈りつつ、記憶を風化させてはならぬとの思いをあらためて強くする。

うれしい発表が2月にあった。公益社団法人「3.11メモリアルネットワーク」の調査結果だ。震災の伝承に取り組む被災3県(岩手、宮城、福島)の施設に2022年は約115万人が訪れたという。コロナ禍前の19年(約93万人)を上回り過去最多だった。将来の巨大地震に備え、未来の命を守るためにも「3・11」を風化させず、伝承し続けなければならない。

31兆円超の巨額予算で被災地の復興は進み、インフラ整備や宅地整備などのハード事業はおおむね完了。福島県の避難指定区域も県全体面積の約2・3%(震災発生当時は約12%)まで縮小し、多くの地域で通常の生活が可能になった。被災3県の製造品出荷額もほぼ震災前の水準に回復した。復興が進行した感慨と同時に、12年の歳月の長さを感じずにはいられない。

進んだ復興計画がある一方で重い課題が残る。東京電力福島第一原子力発電所事故に見舞われた福島県の本格的な復興だ。福島県の22年の沿岸漁業の水揚げ量は震災前の2割程度、21年度末の営農再開面積は震災前の43%にとどまる。福島第一の燃料デブリの取り出しはようやく23年度に着手し、今春から今夏には処理水の海洋放出が始まる。放出終了は30年後とされ、廃炉の終着点は見通せない。

中でも処理水放出はすでに中韓が反発するなど国際的な風評が懸念される。放出は政府の責任で行い、4月の先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合では各国から支持を取り付け、風評から福島県を守る責務を果たしてもらいたい。

福島県の産業振興も進めたい。4月にロボット、水素エネルギー、農林水産、医療などの先端の研究開発を産業化する「福島国際研究教育機構」が発足する。避難指示が解除されても是正されない人手不足や高齢化を企業誘致で補い、福島の真の復興を日本再生につなげたい。

(2023/3/9 05:00)

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