社説/日本の成長率1.3%に 物価目配りし内需主導の成長を

(2023/7/24 05:00)

政府は2023年度の国内総生産(GDP)について、物価変動の影響を除いた実質成長率を1・3%に下方修正する一方、名目成長率を4・4%に上方修正した。1月に公表した成長率は実質1・5%、名目2・1%だった。消費者物価上昇率が1月の見通しより高いと見立てた。物価は24年度に抑えられるとみている。それまでは物価動向に目配りしつつ、内需主導の成長を確実に実現したい。

23年度の消費者物価の上昇率は2・6%で、1月の見通し1・7%から引き上げた。政府が電気・ガスの価格高騰を抑える激変緩和措置を講じていなければ上昇率は3・1%だったという。ただ9月末で期限を迎える同措置は所得制限を設けず、富裕層も対象だ。期限の延長や対象を低所得者に絞るなど、政府には適切な対応を求めたい。

24年度の消費者物価上昇率は1・9%に落ち着く見通し。輸入物価の抑制を見込んでおり、激変緩和措置は延長するにしても終了時期(出口戦略)を示し、財政規律を順守したい。

23年度の実質成長率1・3%のうち内需寄与度はプラス1・6%、外需寄与度はマイナス0・3%。輸出は米欧の金融引き締めや中国経済の停滞を背景に伸び悩み、前年度比0・8%増にとどまる。GDPの過半を占める個人消費は同1・6%増、設備投資は同3・0%増の見通しで、内需に頼らざるを得ない。

内需を支えるには賃上げを起点とした経済好循環を回す必要がある。連合によると23年春闘の平均賃上げ率は3・58%(22年は2・07%)と30年ぶり高水準を達成した。中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)が月末に決める23年度の最低賃金の目安も、中小企業の支払い能力に配慮しつつ引き上げたい。

中小が賃上げ原資を確保するための価格転嫁の推進や、デジタル変革(DX)による生産性向上、さらに新たな価値創造など、中長期の視点でも中小の収益構造を強化する必要がある。また産業界全体でリスキリング(学び直し)を推進するなど、成長分野への人材流動化も進め、賃金を底上げしたい。

(2023/7/24 05:00)

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