社説/経済対策の柱 内需喚起期待も財政規律順守を

(2023/9/26 05:00)

岸田文雄首相は25日、10月中に策定する経済対策の柱(骨子案)を表明した。物価高対策をはじめ、構造的賃上げや投資の促進策などを講じることで、国民生活を守りながら経済活性化を図る。26日に関係閣僚に取りまとめを指示し、具体策の協議を本格化する。内需主導の成長につながると期待したい。

ただ、自民党内には経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案について、15兆―20兆円規模の巨額を求める声もある。本来なら当初予算案に編成すべき項目を寄せ集めるなど、内閣支持率の回復を狙いに「規模ありき」の補正予算案とならぬよう、歳出を十分精査し、財政規律を順守してもらいたい。

経済対策は物価高対策、構造的な賃上げと投資拡大、人口減少を乗り切る社会変革、国民の安全・安心が大きな柱になる。ガソリンや電気・ガスの価格抑制策の延長・拡充、リスキリング(学び直し)を通じた構造的賃上げ、中小企業の賃上げへのインセンティブ(誘因)、投資拡大策の行方を注視したい。

燃料費の価格抑制策の期限を9月末から年末に延長することはすでに表明している。年末以降への延長は新たな財政負担を伴う。富裕層も恩恵を受ける施策を低所得者や運輸業に絞るなどメリハリを効かせたい。施策の終了時期も示す必要がある。市場の価格決定機能を損ねるほか、脱炭素に逆行しかねないことにも留意してもらいたい。

中長期で推進するリスキリングによる構造的賃上げなどは、24年度当初予算案で審議を深めるべき項目のように映る。緊急を要する23年度補正予算案で措置すべきなのか、経済対策の各項目の具体策を見極めたい。

4―6月期の需給ギャップはプラスながら、7―9月期の実質成長率はマイナスとの予測もある。内外需に懸念が残るだけに効果的な経済対策が求められる。だが予算編成をコロナ禍前の「平時」に戻す方針に大きな齟齬(そご)を来さないことが政府・与党には求められる。衆院解散・総選挙を見据えた野放図な歳出を戒めながら、内閣支持率の回復を目指してもらいたい。

(2023/9/26 05:00)

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