(2024/6/5 12:00)
10万分の1グラムの精密風車、100万分の1グラムのパウダーギアなど目視では確認できない超小型樹脂成形部品を長年手がけてきたのが樹研工業(愛知県豊橋市、松浦直樹社長)だ。同社が他の樹脂部品メーカーと一線を画すのは、内製の射出成形機と顧客に提供した情報のストック。その同社が近年力を入れているのが設備の省エネルギー化。稼働している射出成形機は全社で250台。油圧をサーボモーターで制御する省エネタイプの「ハイブリッド成形機」への転換が進む。
樹研工業が使う射出成形機は型締め力10トンクラスが主流。「通常の小型機よりもさらに小さいので、どこも作ってくれなかったことから内製を始めた」(松浦社長)。現在、ハイブリッドタイプは約半数。油圧制御部をサーボモーターにしたことで電気代は3分の1に抑えられる。これを全数、ハイブリッド成形機に置き換える計画だ。
2023年度は新たに6台を導入した。新型は製品のバラつきが少なくなるなど生産性が向上することから、老朽化した射出成形機は廃棄が進む。「かつては全社で400台程度は保有していた。24年も11台を処分した」と松浦馨執行役員は話し、1台当たりの稼働率向上を図る。
またハイブリッド成形機は筐体(きょうたい)の温度が油圧タイプほど上がらない。このため工場の空調使用も抑えられ、樹脂部品メーカー独特の工場の熱気がなくなった。「温度が上がらないということは、油も劣化しにくくなり、メンテナンスも格段に軽減した」と松浦執行役員は効果を挙げる。
同社のモノづくりのもう一つの特徴が製品情報の蓄積。同社が顧客に提供した製品情報はデータベースに蓄積された顧客情報とひも付けし、すべてファイルで保存する。ファイルにとじられる書類は図面だけでなく商談内容、材料の選定基準、設計変更のいきさつなど。「試行錯誤の履歴が分かるので、お客さまのモノづくりの考え方も時系列で追うことができる」と松浦社長はその価値を重視する。射出成形した初品も合わせて袋詰めしてファイルに保存している。
徹底した情報の蓄積はトラブル対応に効果を発揮。「原因を絞る上でこのファイルが大いに役立つ」と生産を担当する松浦執行役員は話す。ファイルには製造条件も記載されており、決定した経緯も分かる。さらに類似品の新製品の立ち上げにも貢献する。
「50年も保存する義務はない。しかし、ここに我々のノウハウが詰め込まれている」と松浦社長は話す。100万分の1グラムを生産する自社設備の技術力と積み重ねたノウハウが同社の信用を支える。
(2024/6/5 12:00)
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