(2024/7/26 12:00)
10年先見据え新たな挑戦を
―日本企業のデジタル変革(DX)についてどう見ていますか。
「DXは推進組織を作って1年以内に成果が出る類のものではなく、ある程度時間がかかる。一方、日本の製造業の多くは過去の成功体験に引きずられ、20年も30年も同じことをやっているケースが多い。まず経営者がそれまでの常識や固定観念を捨てないと変革は進まない。変化の激しい時代には10年先を見据え、新しいことにチャレンジすることが何より重要だ」
―DXのXであるトランスフォーメーションの部分が抜け落ちて理解され、IT導入に力点を置く取り組みも目立ちます。
「新しいITシステムを導入するのはいいとして、それだけでは不十分だ。ITの進化が極めて速いためで、クラウドで提供される最先端の技術をサブスクリプション(定額制)の形で比較的安価に活用しながら、変革に取り組むことが早道になる」
―そうした問題意識が本を執筆する動機になったわけですね。
「元々、IT業界をずっと歩んできた。現在の会社に移ってから現場を回ってみると、製造業はITの活用や選択があまり上手ではないと感じた。まず活動を主導する人材が社内にいない。日本の製造業は元請け・下請けという階層構造のため、このままでは中小製造業がどんどん立ち遅れてしまうとの危機感を抱いた」
―IT人材が不足する中、手軽にプログラムが組めるローコードを活用し、現場担当者がアプリケーションの内製化を行うことの利点も強調しています。
「必ずしもITの専門家ではない製造現場の『シチズンデベロッパー(市民開発者)』や、データアナリストの役割がより重要になる。後者の場合は、せっかく収集したデータをきちんと分析できないと宝の持ち腐れになるためだ。以前は数学を専攻した人材がデータアナリストを務めていたが、今では人工知能(AI)で分析作業ができる。つまり、AI基盤をどう使いこなすかというコンセプトを考える人が社内にいればいい。シチズンデベロッパーもデータアナリストも仕事が片手間になりかねないので、兼務は避けた方がいい」
―生成AIも大きな話題となっています。
「当社の扱う製造業務支援ソフトウエア開発基盤「TULIP(チューリップ)」でも生成AIの機能を使って、ローコードをある程度プログラミングできるまでになっている。つまり人がプログラムするのではなくて、AIがコーディングしてそれを人が検証する時代が来ている。製造業について言えば、特に人が間違った判断を下しやすいようなもの、ミスや損失を出したプロセスへのAIの適用が進むだろう。産業界で相次ぐ品質不正問題を受けて、忖度(そんたく)することのないAIによる客観的な分析結果をもとに、品質やモノづくり全体のレベルアップを図る方向にシフトしていくと見ている。そこでのデータ収集にもTULIPのようなプラットフォームが役立てられる」
(2024/7/26 12:00)
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