社説/最低賃金「目安」超え 賃上げ持続へ中小の基盤強化を

(2024/8/27 05:00)

2024年度の最低賃金は、各都道府県で意欲的な答申が相次いでいる。最低賃金の引き上げ額の“目安”である時給「50円」に対し、26日時点で25都道府県が51―59円を労務局に答申した。最低賃金が相対的に低い東北や四国、九州が大幅に増額している。地域間の賃金格差が是正に向かうと評価したい。ただ国際的に見劣りする最低賃金はさらなる引き上げが必要だ。中小企業の稼ぐ力を高め、価格転嫁も適正化することで、持続可能な賃上げにつなげたい。

中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は7月25日、24年度の最低賃金(時給)を全国平均で50円引き上げ、1054円とする目安を決めた。最低賃金は各都道府県の審議会が目安に基づいて8月中に労務局に答申し、労使双方から異議申し立てがなければ、10月から順次発効される仕組みである。

47都道府県のうち岩手と徳島の2県を除く45都道府県がすでに答申。目安通り50円とした都道府県が20なのに対し、51円以上が25県に及ぶ。愛媛の59円を筆頭に、島根が58円、鳥取57円、佐賀と鹿児島、沖縄が56円、青森と山形、高知、大分、宮崎などが55円と意欲的な答申が相次ぐ。時給を目安以上に引き上げることで、隣県への人材流出を防ぐ狙いもあるようだ。

時給800円台の県がなくなり、45都道府県は同900円以上となった。同1000円以上も23年度から倍増して16都道府県に。賃金の底上げと地域格差が是正に向かうと評価される。

ただ日本の平均給与は経済協力開発機構(OECD)加盟の38カ国中25位(22年)にとどまる。政府は30年代半ばまでに最低賃金を1500円とする目標を掲げ、5割を下回る中小企業の価格転嫁率の引き上げを目指すという。発注企業の「買いたたき」を防ぐ下請法改正などを検討している。中小企業の賃上げ原資を適正に確保したい。

中小企業も事業再生などの自助努力が求められる。政府の支援も活用しつつ収益基盤を強化できれば、親企業との価格交渉力が高まる。「金利のある世界」への備えにもなるはずだ。

(2024/8/27 05:00)

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