社説/最低賃金1500円 「20年代」実現へ具体的な道筋を

(2024/10/3 05:00)

石破茂首相は、2020年代に最低賃金の全国平均を時給1500円に引き上げる目標を掲げた。20年代最後の29年度に達成するには、25―29年度の5年間で年平均「89円」引き上げる必要がある。24年度は過去最高となる「51円」の引き上げ額を実現したが、これを大幅に上回る賃上げを5年間継続しなければならない。中小企業の支払い能力をいかに担保するのか。総選挙で審判を受けた上で、具体的な道筋を示してもらいたい。

岸田文雄政権下、最低賃金は30年代半ばまでに時給1500円を目指すとしていた。石破首相はこれを20年代に前倒しした形だ。主要国で見劣りする賃金は底上げが必要だが、ハードルの高さに留意する必要がある。

最低賃金は中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が引き上げ額の「目安」を決め、各都道府県の審議会が目安に基づいて最終額を決める。24年度の最低賃金は、目安の50円に対し、最終額は51円と目安を超えて時給1055円に。時給、引き上げ額ともに過去最高で、27県が目安を上回っている。

目安以上に時給を上げることで、隣県への人材流出を防ぐ狙いがある。賃上げは消費喚起にもつながる。ただ、中小企業の支払い能力が懸念される。24年度の過去最高の引き上げ額を継続しても、石破首相が掲げる目標に遠く及ばない。人材確保のための防衛的賃上げにも、おのずと限界があると認識したい。

高いハードルをいかにクリアするのか。石破首相は中小企業の生産性向上や高付加価値化、価格転嫁への支援を講じるという。企業価値向上や商習慣見直しに向けた具体的な道筋を早期に示す必要がある。中小企業の賃上げ原資を積み上げ、石破首相の目標に接近していきたい。

他方、石破首相は消費を後押しするため、賃上げと同時に、社会保障をめぐる「将来不安を取り除く」と訴える。社会保障は経済成長だけでは持続可能性を担保できず、将来的な消費増税など財源確保が不可欠だ。国民負担を求める議論に着手するためにも、前提となるデフレ完全脱却を早期に実現したい。

(2024/10/3 05:00)

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