社説/内外から円安圧力 日米「政局」の行方に懸念拭えず

(2024/10/31 05:00)

日米政局が不透明さを増し、円安圧力が強まっている。衆議院で過半数を割った自民・公明両党は、“ハト派”色を強める野党との部分連合により、日銀の金融政策正常化が制約される懸念が指摘される。11月5日の米大統領選でトランプ前大統領の再選となれば、円安はさらに進みかねない。日銀は中立を保ち、日米政局が日本経済に及ぼす影響を慎重に見極め、為替安定化へ適切に対応してほしい。

日銀は31日まで開く金融政策決定会合で、追加利上げを見送る見通しだ。国内の政治情勢が不安定で、金融市場や日本経済の不確実性が高まっている状況を勘案すれば適切な判断だ。人件費の高騰を強く反映するサービス価格の動向や2025年春季労使交渉(春闘)も見据え、金融政策正常化を模索したい。

ただ自公両党が少数与党となり、国民民主党など野党との部分連合となれば、経済財政運営は一定の制約を受ける。来夏の参院選を見据えて株価を意識すれば、日銀が利上げに動きにくい環境も想定されてくる。日本経済の足腰を弱めた“円安・株高バブル”に戻ることなく、賃金も物価も金利も上昇する拡大均衡型の経済にいかに移行するかが大きな課題となろう。

円安は日本の株価を押し上げやすい半面、輸入物価の上昇が経済好循環の実現に水を差す。過度な円安局面では日銀の利上げも容認されるとみられるが、来夏の参院選までは基本的に金融緩和環境が続き、日本経済の実力を反映しない円安基調で推移しかねないと留意したい。

目前の米大統領選も、為替相場には大きな懸念材料だ。トランプ氏の財政膨張は米国市場の株高、ドル高、債券安を招くとみられ、民主党のハリス副大統領も程度の差こそあれ財政出動に意欲を示す。円安進行に加え、インフレの再燃が米国経済に及ぼす影響にも留意したい。

国内政治も為替相場も安定が第一である。自民と国民民主の両党が31日、経済政策をめぐり幹事長会談を行う。国民民主も悪い物価上昇を望まない。政治と為替の二つの安定に向け、実のある議論を進めてほしい。

(2024/10/31 05:00)

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