排出量取引”日本流”に 26年度本格始動、制度設計進む

(2024/11/26 05:00)

過去の削減・研究開発を配慮

2026年度から本格始動する排出量取引に向け、日本の特性を踏まえた制度設計が進んでいる。政府は概要案をまとめ、直近3年間の平均で二酸化炭素(CO2)の直接排出量が年10万トン以上の企業に参加を義務付ける。鉄鋼や電力、化学など300―400社が対象で、国内排出量の60%をカバーできると見込む。幅広い産業の集積が日本の特徴。これまでの排出削減や研究開発にも配慮するなど、25年度内にも詳細な制度設計を行う。

政府が業種などに応じてCO2を排出できる量を定めた「排出枠」を、企業に無償で割り当てる。排出量が排出枠から超過した企業と余った企業で、枠を売買する。それでも排出枠に収められなかった場合は、負担金などの罰則を設ける。26年度の制度開始時は23―25年度の排出実績を基にする。26年度は排出枠の算定などに当て、実際の取引は27年度から始まる見通し。

排出枠の算定方法は今後詰める。これまでの企業の削減努力や業種特性を考慮すべく、生産量当たりの排出量が少ない上位企業をベンチマークとする方式を基本案として検討する。同方式に当てはめるのが困難な業種は、年ごとに一定の削減率を設け割り当て量を算定する案もある。ほかに排出規制の緩い他国への移転を抑制すべく、輸出型産業などを念頭に追加枠を設けるといった対策も検討する。水素還元製鉄など、中長期的な成果を想定した研究開発投資への優遇も考慮する方針だ。

制度を議論する専門家会合で「グリーン・トランスフォーメーション(GX)の取り組みは、日本経済の停滞を打破する大きなドライバーとなり得る」と、経済産業省イノベーション・環境局の龍崎孝嗣GXグループ長は排出量取引の意義を語った。企業にとっては手続きやコスト面の負担が高まる可能性があるほか、排出削減に対する業種や個社ごとの取り組みやすさなども異なる。政府は今後、産業界の意見も踏まえつつ、有識者を交えて制度設計につなげる。

(2024/11/26 05:00)

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