(2015/10/7 05:00)
スウェーデン王立科学アカデミーは6日、2015年ノーベル物理学賞を東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長(56)、カナダ・クイーンズ大学のアーサー・マクドナルド名誉教授(72)の2氏に贈ると発表した。受賞理由は「ニュートリノ振動の発見」。素粒子ニュートリノに質量があることを世界で初めて観測で証明した。(総合3、ノーベル賞に関連記事)
日本のノーベル賞受賞者は、5日に生理学医学賞の受賞が決まった大村智北里大学特別栄誉教授(80)に続き、24人目(外国籍含む)。物理学賞は、14年に青色発光ダイオード(LED)の発明で受賞した3氏に続く11人目となる。授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、賞金800万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)は受賞者2人で分ける。
ニュートリノは物質を構成する最小単位である素粒子の一つ。30年代に存在が予言され、50年代に原子炉を使った実験で検出された。だが、その後の実験でも質量は確認できず、長らく重さはゼロだと考えられてきた。
梶田氏は、98年に素粒子観測装置スーパーカミオカンデ(岐阜県飛騨市)で、宇宙線が地球の大気と衝突してできた大気ニュートリノを観測。ニュートリノの質量がゼロではないことを示す「ニュートリノ振動」現象を初めてとらえた。
梶田氏の恩師である小柴昌俊東大特別栄誉教授(89)は、スーパーカミオカンデの前身のカミオカンデで、87年に超新星爆発で飛来したニュートリノを検出。02年のノーベル物理学賞を受賞した。
梶田氏と戸塚洋二元高エネルギー加速器研究機構長は、共に小柴氏の下で研究に従事。08年に死去した戸塚氏も実験に貢献し、米国版ノーベル賞といわれる07年のベンジャミン・フランクリン・メダルをマクドナルド氏と共同で受賞している。
マクドナルド氏は、カナダのオンタリオ州にあるサドベリー・ニュートリノ観測所で、ニュートリノが大気中から飛来する様子を詳しく観測。ニュートリノがその特性を飛来しながら変えていることを突き止め、ニュートリノに質量がある証拠をとらえた。
【略歴】
梶田 隆章氏(かじた・たかあき)81年(昭56)埼玉大理卒。86年東大院理学系研究科博士修了、同年東大理学部助手。88年同宇宙線研究所助手。92年助教授。99年教授。08年所長。朝日賞、仁科記念賞、日本学士院賞など受賞多数。理学博士。埼玉県出身。
【略歴】
アーサー・マクドナルド氏 69年米カリフォルニア工科大学で博士号取得。現在、カナダ・クイーンズ大名誉教授。43年カナダ生まれ。
(2015/10/7 05:00)