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深層断面/熊本地震で奮闘したスーパー・コンビニ、東日本大震災の教訓生かす

(2016/5/31 05:00)

小売り、配送に課題

日常生活を支えるインフラであるスーパー、コンビニエンスストア。4月14日、16日に最大震度7を相次いで観測した熊本地震では、熊本、大分両県の多くの工場や店舗が被災した。商品の生産や店舗の再開では東日本大震災での経験や、事業継続計画(BCP)が生き、大きな混乱は起きなかった。一方で課題として残ったのが、道路の寸断や渋滞による“ラストワンマイル”の配送の壁だった。(江上佑美子)

■需給バランス崩れる/水源を持つ重要性再確認

【代替生産で対応】

  • 阿蘇大橋の崩落で渋滞する県道(熊本県阿蘇市)

  • 熊本地震後、店内の落下物などを片付け営業再開を急いだ(セブン−イレブン)

東日本大震災直後は、燃料不足や買いだめが起きたことで店頭が品薄状態になり、関西地方にも波及するなど、需要と供給のバランスが大きく崩れた。熊本地震では被災範囲が東日本大震災に比べ限られていたという理由もあり、局地的な影響にとどまった。

セブン&アイ・ホールディングス(HD)は「東日本大震災の教訓が商品供給で生きた」と見る。傘下のセブン―イレブン・ジャパンは熊本県内の4工場で、おにぎりや総菜などを製造している。地震後すべての工場が停止したが、九州にある他の16の工場から熊本県内の店舗に商品を供給した。ファミリーマートも熊本県内の中食工場が被災したため、長崎、福岡両県での代替生産で対応した。

セブン―イレブンはすぐに食べられるおにぎりや弁当について、生産アイテム数を絞るとともに納品数を増やした。

「東日本大震災で感じたのは水源を持つ重要性」(ファミリーマート)。同社は2008年、湧き水をペットボトルに詰める工場を宮崎県に設けた。東日本大震災後に首都圏などで水不足が起きた際も、自社工場のため増産などがしやすかったという。12年には新潟県にも工場を設けた。熊本地震の被災地でも飲料水のニーズは特に高く、宮崎、新潟両県の工場から、支援物資として届けた。

【休業店舗の外で販売】

経済産業省は地震発生後、小売り各社に店舗再開を要請した。ただコンビニの加盟店オーナーや小売店舗の従業員らも被災しており、復旧のための人手が足りない状況だった。セブン&アイ・HDは「東日本大震災でも同様の課題があった」として前震翌日の4月15日には、社員を現地に派遣した。他の小売業も本部社員らを集中的に送り、状況の把握や営業支援を急いだ。

店舗には食品や日用品を求める人の長い列ができた。需要に応えようと、イオンは休業店舗の外の駐車場で、食品や日用品などを販売した。

5月20日には橋の崩落やトンネルの不通で買い物が不便になった熊本県南阿蘇村で、車を使った移動販売を始めた。東日本大震災後にも仮設住宅への移動販売をしており、車を青森県から移送した。

今も一部のスーパーやコンビニは休業や営業時間短縮を余儀なくされている。ある関係者は「熊本県は比較的地震が少ない地域という認識だった。もう一度店舗の耐震性を見直す必要がある」と語る。

■BCP対策、各社進む

【協定生かし物資提供】

  • イオンは3月に日本航空と結んだ緊急物質輸送の覚書を生かし、毛布などの支援物資を空輸した

小売り各社は支援物資の提供でも存在感を発揮した。取引先と連携し、事前の協定を基に行政の要請に応じて食品やおむつ、毛布などの生活必需品を届けた。

ただ災害発生直後は行政も混乱しているため、支援の申し出を受けても適切に対処するのは難しい。ファミマは4月15日には益城町役場におにぎり500個と水500本など比較的少量を配送した。同17日以降は物資の偏りなどを防ぐために熊本県と相談して支援内容を決め、県にまとめて渡す方法をとった。

イオンの津末浩治グループ総務部長は自治体などとの協定や防災訓練を通じ、「有事の際はイオンに相談しようという認識が広がっている」と話す。同16日には、熊本県御船町から要請を受け、連携先の日本航空や陸上自衛隊と共同で、簡易避難所として使えるバルーンシェルターを設置した。

東日本大震災から5年余りが経過し、スーパー、コンビニ各社はBCP対策を進めてきた。セブン&アイ・HDはインターネット上の地図に店舗の被害状況などを表示するシステムを構築し、埼玉県杉戸町に燃料備蓄基地を設けた。

イオンは災害時に備え、食品や日用品のメーカーと連携して工場や商品などの情報を一元管理するポータルサイトを構築した。店舗への自家発電施設を進めるなど、災害時にも事業を継続できるよう、仕組みづくりをしている。

【道路寸断で人海戦術】

しかし今回の熊本地震では、商品の輸送に難航した。セブン&アイ・HDは「道路事情が課題となった」としている。同社は熊本県内の需要増に対応するため、配送車両を増車、増便した。こうした工夫をしても、店舗に届けられなければコンビニの役割は果たせない。通行不可の道路を把握することはできても、迂回(うかい)路を見つけるのは難しく「今後の課題だ」としている。

通行できる道路でも、深刻な渋滞に巻き込まれた。あるコンビニ関係者は「緊急通行車両として、もっと認知してほしい」と訴える。

ローソンは震度7を2回観測した熊本県益城町に、配送センターを持つ。同センターの被害は少なかったが周辺の道路が寸断したうえ、配送員が被災したため人手が足りなくなった。「応援で入った社員が小道を通って運ぶ人海戦術を取った。阪神・淡路大震災や東日本大震災の経験が生きた」という。

(2016/5/31 05:00)

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