[ ICT ]

スマートホーム、東京五輪までに普及なるか−パナソニック、電力線通信で1km超実現

(2016/8/31 05:00)

家電など家庭内の機器をネットワークでつないだスマートホームの実現が期待されている。しかし普及には通信インフラをどう敷くかが課題となっている。パナソニックは家庭用の電力線を使って通信する「HD―PLC」を展開し、ホームネットワーク向けに提案している。このほど通信距離を従来の5倍以上となる1キロメートル以上先まで伸ばすことに成功し、技術の提供を始めた。家だけでなく大型ビルや工場などの産業用途、スマートシティー(次世代環境都市)への展開も視野に入れて普及を狙う。(政年佐貴恵)

PLCは家庭用の電力線を使ってデータ通信をする技術だ。配線工事が不要で、コンセントを差し込むだけで通信できる。IoT(モノのインターネット)などへの活用が見込まれている。

パナソニックは2010年から、より高速に通信できる「HD―PLC」の技術のライセンス提供を始めた。エレベーターや屋外駐車場といった小規模な産業用途を中心に、監視カメラや電源供給、緊急電話などのネットワーク化に採用されている。しかし「通信距離が200―300メートルであり、通信範囲が限られる点が用途拡大の課題だった」(城戸亮二PLC事業推進室主任技師)と話す。

そこで今回、端末を経由して別の端末に情報を伝送する「マルチホップ機能」を開発。同機能を搭載したLSI(大規模集積回路)であれば、数キロメートル先まで通信距離を伸ばせるようにした。端末1000台規模のシステム構築が可能で、例えば高層マンションなら全室の監視カメラとインターホン、人感センサーなどをネットワーク化できる。大規模ビルや工場など、より大がかりな産業用途での活用も促す構えだ。

張り巡らせた通信網の中で、最も効率の良い伝送ルートを自動計算する機能も付加した。途中の経路が寸断された場合は、ルートを自動で変える。PLC事業推進室の宮崎富弥主幹は「より安定的な通信が可能だ」と自信を示す。

今後は普及に向けLSIメーカーと技術ライセンス契約を進め、事業体制を強化する。将来は街灯のように市街地の電気機器に搭載し、スマートシティーへの応用も狙う。東京五輪・パラリンピックが開かれる頃には、より効率的で快適な都市インフラが実現している可能性がある。

(2016/8/31 05:00)

関連リンク

電機・電子部品・情報・通信1のニュース一覧

おすすめコンテンツ

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン