[ ICT ]

【電子版】製造現場にIoT、成果と課題浮き彫りに−2日目のIVI公開シンポから

(2017/3/11 07:00)

  • 10日のIVI公開シンポジウムで行われた「業務シナリオセッション2」。(左から)大竹麺機の黒田直史氏、日立の堀水修氏、由紀精密の笠原真樹氏

インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI、理事長=西岡靖之法政大学教授)は10日、東京都内で公開シンポジウムの2日目を開き、製造現場へのIoT導入について25件の実証試験の成果報告をした。顧客から機械の稼働データをもらい、品質向上に生かした例や、ベテランの暗黙知を数値化できた例などが紹介された。また、成果とともに課題も多く示され、各社が共通して取り組むべき課題の輪郭も浮かび上がりつつある。

データ活用で客先の説得に苦労

即席めん製造機メーカーの大竹麺機はアビームシステムズやNECなどと連携し、機械の納入先であるイトメンの工場にIoTを導入。機械の稼働や周辺環境のデータを収集することで、温度などが麺の量のばらつきに影響することを特定した。

こうした成果の一方で、「お客さんに(ノウハウにもかかわる)データを下さいと頼むのは、難しいお願いだった」と大竹麺機側は振り返る。今回、顧客のイトメンにIoTのメリットを熱心に説明し、なんとか納得してもらった。このような努力が今後も欠かせないようだ。

連動阻む、言葉の意味の揺らぎ

日立製作所は、ニコンなどと連携し、稼働していない機械などの生産リソースをシェアリング(共有)できるシステムの開発を目指している。担当した日立の堀水修IVI理事によると、課題として言葉の意味に揺らぎがあり、企業や工場の間でデータを連動させるのを難しくしているという。堀水氏は「茨城県内にある日立の工場の間でも、ある単語の指す意味が違う場合がある」。そこで言葉の意味を統一する、「言葉の名寄せ」を進めてきた。

さらに、空いている生産設備はあっても、熟練の溶接工など人的資源が足りないとシェアリングはできない。「人もリソースとして見える化したうえ、検索できるような仕組みが必要かもしれない」(堀水氏)という。

保全+品質保証で価値向上

設備保守のIoT化に取り組んだのはオムロンやトヨタ車体など。共通の課題として、「日本の設備はなかなか壊れないので、異常時のデータを集めにくい」(オムロンの森健一郎氏)といったことが挙がった。長期にわたりデータを集め続ける必要がありそうだ。

また、東芝の松岡康男氏は、「保全だけではメリットを実感してもらいにくい。保全に品質保証を組み合わせれば、価値は1000倍高まる」との見解を示した。

トヨタでは技能を数値化

IoTで技能の数値化などに取り組むのはトヨタ自動車やジェイテクト。トヨタの福田徹氏は、「技能の見える化はできた。ただ、若手にアドバイスできる人工知能を実現するまでは至っていない」と進捗を話した。「今後、画像データなど大量のデータを効率よく蓄えて、検索できる仕組みも必要だろう」と見通す。

今回のシンポジウムを主催したIVIは、200以上の企業や団体が加わる国内最大級の製造業向けIoTの推進団体。実証の成果だけでなく、抽出された課題についても、多くの企業にとって参考になるはずだ。

(2017/3/11 07:00)

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