[ 機械 ]

【プレス技術】暗黒大陸の物流改革大作戦-プレス工場を大変身させる秘密の裏ワザ/調達物流改善の取組み[2]/(下)

(2017/7/11 13:30)

  • 表3 運送会社評価の実施:アンケート調査

調達物流改善成功の4つのポイント

 それでは具体的な取組みについて確認していこう。まずこれだけは外してはならない4つのポイントについて解説する。

【Kein物流改善研究所 所長 仙石 惠一(せんごくけいいち)】

→【プレス技術】暗黒大陸の物流改革大作戦-プレス工場を大変身させる秘密の裏ワザ/調達物流改善の取組み[2]/(上)

成功のために取り組むべき9ステップ

5.運送会社評価の実施

 今後取引を行っていくパートナーである運送会社。より質の高いパートナーを探すために運送会社の評価を行う。そして運送会社の選定は慎重に実施する。評価の視点はS(安全)、Q(品質)、D(納期管理)、C(コスト)、M(マネジメント)。候補運送会社にはこの5つの視点での質問状を送付し、それに回答してもらおう。その回答に応じて点数を付けて評価する(表3)。たとえば何か問題が発生したときの問い合わせに対する標準的な回答時間を質問してみる。10分以内と回答する会社もあれば、1時間以内と答える会社もあるだろう。自社の要求水準に照らし合わせ、そのレベルを評価すればよい。併せて候補会社を訪問し、物流現場を見せてもらおう(表4)。現場の床にフォークリフトのタイヤ跡やフォークリフト自体に傷が目立つ会社は要注意だ。丁寧な荷扱いをしていればそのような状況には成り得ない。自社の荷物を手荒に扱う会社とは取引をしないことは当然だろう。

  • 表3 運送会社評価の実施:アンケート調査

  • 表4 運送会社評価の実施:現場調査

6.物流費の部品価格からの分離

 この業務が最も難関だ。前回、前々回も本業務について触れているので簡単にまとめておこう。

○物流費は原則として取引価格として明示されている額を分離する

○明確になっていない場合はサプライヤーと合意の上その額を分離する

○一方的な額の決定と分離は禁物。下請法違反となる

○分離した額が想定より小さい場合は本プロジェクトの成否にかかわるため要注意

○今からでも遅くないので、新取引部品の価格には物流費を明記しよう

○そしてほとんどの部品で物流費が明記された時点で当プロジェクトを始めることでもよいだろう。たとえそれが3年後であっても

7.運送会社の選定と輸送料率の決定

 この点についても前回購買部門の役割として紹介させていただいた。要点だけをまとめておこう。

○RFI-RFP-RFQの3ステップで慎重に運送会社を選定する。

○運送会社には「物量情報」、「荷姿情報」そして「ルート組み情報」を提示し、よりよい運営方法を提案してもらう

○より精度の高い見積が欲しければ、より精度の高い「物流仕様書」を作成する必要があることを認識しておこう

○全国のサプライヤーから部品を調達している場合、一定の地区(関東地区、東北地区など)ごとに運送会社を選定する方法もある。地場に強い会社が必ず存在するからだ

○最終選定時にはSQDCMの視点から総合的に判断する。価格だけで判断すると後で痛い目に合うことも考えられるので注意が必要だ

○運用開始後に運送会社から改善提案をもらうことも取引の条件にしておこう

  • 図3 荷姿モジュールの変更

8.荷姿モジュールの変更

 本アイテムは上記成功のための第2のポイントに従って実行する。トラックで混載輸送を始めてみたもののなぜか積載効率が向上しない、このような改善の壁にぶつかることがある。それもそのはず。荷物同士が積み重ならないから。これはある意味で当然かもしれない。なぜなら各社使用している容器が異なるからだ。形も寸法もまちまち。これでは積載効率は上がらない。そこで必要になってくるアイテムが「荷姿モジュールの変更」だ。「荷姿モジュールの統合」といってもよいだろう(図3)。最低でも箱の長手寸法と幅寸法は統合したい。これを取引サプライヤー間で実行する。容器投資が必要となるが、輸送費改善で早期に回収が可能な場合がある。本プロジェクト検討時に容器投資と輸送費削減による期待効果を算出しておこう。荷姿モジュール問題はできるだけクリアにして運用したいところだ。

9.その他の実施項目

 その他の実施項目として「物量計算情報システムの構築」が挙げられる。サプライヤーに対する発注情報は明確だが物量情報は今まで無頓着だったはず。発注数量情報と荷姿情報を結び付けた物量を計算できるシステムが必要になる。この情報を運送会社に送付することで配車管理につなげるのだ。

 当システム構築の他に「日常改善のしくみ構築」を挙げておこう。調達物流業務が始まると、プレス工場、サプライヤー、運送会社の3者が互いに改善アイデアを出しながら業務効率を向上していく必要がある。この一環として「共同改善活動」を実施していきたい。3者がそれぞれ目標値を持ってお互い協力し合いながら改善を進めていく。この活動の継続こそが長いスパンで見た調達物流の進化につながるのだ。

 3回にわたって調達物流改善について解説させていただいた。正直簡単な改善アイテムではないことは事実だ。一方でジャストインタイムと物流コスト削減を両立できるウルトラC的改善であることに間違いはない。今すぐに着手できずとも、将来的に実施できるように今から準備を進めていってはいかがだろうか。

【物流豆知識】

「トラックの積載制限」

 運転者は政令で定める積載物の重量・大きさ・積載方法(積載重量など)の制限を超えた積載をして車両を運転してならない、とされている。自動車の積載物の重量は、基本的に自動車検査証または保安基準適合標章に記載されている最大積載重量を超えてはならない。

 積載物の長さは自動車の長さにその長さの10分の1の長さを加えたものを超えてはならない。幅は自動車の幅を超えてはならない。高さは3.8mからその自動車の積載場所の高さを減じたものを超えてはならない。この3.8mについて、公安委員会が道路や交通の状況により支障がないと認めた場合には3.8m以上4.1m以内とすることができる。

 荷主は、運転者に過積載運転を要求したり、過積載になることを知りながら、重量の制限を超える積載物を運転者に引き渡したりしてはならない。常に積載物の重量は認識しておくよう留意しよう。

プレス技術 2017年4月号より

→ MF-Tokyo2017特集

(2017/7/11 13:30)

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