[ 化学・金属・繊維 ]

住友鉱、EV電池正極材の増産加速 需要増で安定供給

(2017/7/6 05:00)

住友金属鉱山が電気自動車(EV)用リチウムイオン電池の正極材料「ニッケル酸リチウム」(NCA)の増産対応を急ピッチで進めている。2018年1月までに生産能力を月1850トンから同3550トンへ増強。原料となる硫酸ニッケルの生産能力も、18年度までに16年度比5000トン増の年7万8000トンに増やす。環境規制の強化に伴いEV市場の拡大が見込まれる中、同電池の需要増に備え、NCAの安定供給体制を整える。(斉藤陽一)

需要増で安定供給体制

  • ニッケル酸リチウム(NCA)

NCAの製造工程は硫酸ニッケルから「プリカーサー」と呼ばれる中間材を作る前工程と、プリカーサーを炉で焼いてNCAを作る後工程に分かれる。これまで前工程は磯浦工場(愛媛県新居浜市)で、後工程は磯浦工場と子会社の住鉱エナジーマテリアル楢葉工場(福島県楢葉町)で手がけていた。

【180億円投資】

月3550トン体制の実現に向けては総額約180億円の設備投資を予定。硫酸ニッケルを生産する播磨事業所(兵庫県播磨町)内にプリカーサーの製造設備を導入し、18年1月からNCAの前工程を2拠点体制にする。また磯浦工場では、NCAの後工程の増強を目的に7番目の工場建屋を建設中で、17年秋に完成する予定だ。

また原料の硫酸ニッケルについても、播磨事業所とニッケル工場(愛媛県新居浜市)の生産能力を18年度に向け増強。播磨事業所は16年度比4000トン増の年4万9000トン、ニッケル工場は同1000トン増の年2万9000トンに増やす。

【野心的な目標】

  • 住友金属鉱山磯浦工場(愛媛県新居浜市)のニッケル酸リチウム焼成工程。左手にある装置は焼成炉

住友鉱のNCAはパナソニックとの共同開発品で、主に米テスラのEVに採用されている。テスラは普及価格帯のEVセダン「モデル3」の発売により、EV生産を18年に年50万台、20年に同100万台へ拡大する野心的な目標を掲げる。住友鉱がNCAの生産を増強する背景にはテスラのEV増産がある。

一方、テスラ以外でも、独フォルクスワーゲンやダイムラーが25年に向けてEV事業を強化する方針を示すなど、世界各国の環境規制強化を踏まえて完成車メーカーのEV戦略は加速する見通しだ。

【まず月3550トン体制】

  • 米テスラ日本法人の直営店に並ぶEV

住友鉱の阿部功執行役員材料事業本部副本部長兼電池材料事業部長は、NCAについて「まずは月3550トン体制をしっかり立ち上げることが先決」と強調。その上で「電池メーカーから追加の増産や海外進出の要請があれば、当社も考えなければならない」と話す。30年ごろのEV市場を見据え、住友鉱としても月3550トンの「さらに先」の生産戦略が求められそうだ。

(2017/7/6 05:00)

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