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深層断面/「東芝メモリ」売却、WDと大筋合意も… 半導体市況、来年“軟化”!?

(2017/8/28 05:00)

  • 来年のメモリー市場は韓国勢の投資攻勢や中国勢の台頭で軟化する懸念がある

8月末までの契約締結を目指した東芝の半導体メモリー子会社「東芝メモリ」の売却交渉が大詰めを迎えた。売却に反発し、係争状態にまで陥った米ウエスタンデジタル(WD)に歩み寄り、同社を含む「新日米連合」との優先交渉で合意。具体的な条件を詰めている。だが、メモリー市場は韓国勢の投資攻勢や中国勢の台頭で、2018年には市況軟化を懸念する見方もある。交渉がまとまっても楽観はできない。

(渡辺光太、政年佐貴恵、編集委員・池田勝敏、梶原洵子)

≪2カ月遅延、楽観できず≫

「針が元に戻ったということだ」―。東芝メモリの売却をめぐり対立してきた東芝とWDだが、もともと半導体メモリー事業で合弁会社を運営するなど密接な関係にある。そのため売却先候補にWDを加えることは、当初から予想されていた。

「こじれてしまった関係を修復するのに時間がかかったが、(売却の)相手としては当然だろう」(交渉関係者)。「WDとの係争状態を解決せずに売却は難しい」との声は多く、両社の関係改善が待望されていた。

両社もお互いの重要性は認識。水面下で落としどころを模索していた。産業革新機構や日本政策投資銀行、米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などによる「日米連合」の枠組みも6月頃に一度浮上。出資比率などで折り合わず頓挫したが紆余(うよ)曲折を経てWDも含めた同連合との交渉に落ち着いた。

今後の焦点はWDによる経営への関与の度合いだ。当初の優先交渉先だった「日米韓連合」では、韓国SKハイニックスが議決権を要求していることが後から分かり、交渉のネックとなった。

連合関係者は「(WDが)経営権を取得しない方向で合意している」と話す。ただ、交渉関係者からは「正式な書面で出てこなければ信用できない」との声があり、「細かく契約で縛ることになるだろう」。さらに「日本主導をより強めるために、東芝も出資する」(関係者)方針だ。

すでに売却契約締結は当初予定の6月末から2カ月遅延。事業への影響が懸念されるが、ある外資系アナリストは「交渉が進めば、業績にも好影響を及ぼす可能性が高い」と話す。窪田真之楽天証券経済研究所長は「東芝メモリにとってベストのシナリオを選ぶべきだ。最も悪いのは、中ぶらりんの状況が続くこと」と指摘する。

≪銀行団が背中押す−競争力低下懸念≫

「このままでは支援を続けられない」。関係者によると、8月中旬に開いた会合で主要行担当者は東芝に対し、メモリー事業の早期売却を迫った。今回の東芝と「新日米連合」が歩み寄った背景には、革新機構や政投銀、米ベインキャピタル、韓国SKハイニックスなどで構成した「日米韓連合」への売却交渉の遅れにしびれを切らした銀行団の意向もある。

「『メモリ』を売らない選択肢はない」(主力行首脳)。売却合意後の独禁法審査は半年以上かかるとされる。東芝が18年3月期に2期連続の債務超過で上場廃止となれば東芝の信用力が下がり、多額の融資をする銀行団も損失拡大の恐れがある。銀行団は「逆算するとタイムリミット」(主要行関係者)となる8月末までの合意を東芝に求めていた。

17年3月期の決算会見で綱川智社長は、東芝メモリの新規株式公開(IPO)で乗り切る案について「一般論として選択肢はいろいろある」とした。主力行首脳は「交渉のポーズとして複数の選択肢をにおわすのは分かる。だが本気で考えているのであればいかがなものか」と懸念を示していた。

メモリー事業は毎年3000億円規模の投資が必要で市況変動リスクが大きく、「抱え続けることはリスクが大きい」(主力行幹部)。銀行団には否定的な見解が多く、メモリー事業売却は譲れない一線だった。

現在、スマートフォンの大容量化やデータセンター需要の増加を背景に、NAND型フラッシュメモリーの市場は好調だ。東芝も17年4―6月期のメモリー事業の営業利益率は35%、全社営業利益は4―6月期では過去最高。市場は年内は好調と見られる。

≪海外勢、設備投資着々と≫

調査会社の台湾トレンドフォースは、3次元構造NANDを中心に年内は需給が逼迫(ひっぱく)、価格も高水準で推移すると予測している。東芝関係者も「年末までの価格は見えている」とし、事業の好調さに手応えを示す。

ただし「問題は18年上期」(業界関係者)。現在、各社は設備投資で攻勢をかけており、64層、72層NANDを中心に供給問題が解消するとみられるからだ。

サムスンは6月に稼働した平澤工場と中国・西安工場を中心に、2兆円規模の投資を決定。同SKハイニックスも韓国・忠清北道で新工場を建設中で、17年は約9000億円の投資を計画する。米インテル・米マイクロン連合も64層NANDの年内量産化を計画。インテルは中国・大連の工場に、マイクロンはシンガポールの工場に投資する構えだ。

さらに18年には中国メモリーメーカーの台頭が予測される。XMCを源流とする長江ストレージ(YMTC)や、台湾UMCの技術を活用する福建晋華(JHICC)などが代表で、メモリーの需給バランスに大きく影響しそうだ。

東芝がメモリー事業の売却でWDなどを含めた新日米連合と合意したとしても、各国公取委による独禁法の審査がすんなり進む保証は全くない。売却問題の解決に時間を取られれば取られるほど、設備投資力や技術開発にも影響は避けられず、東芝メモリの競争力低下が懸念される。

(2017/8/28 05:00)

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