[ 機械 ]

第47回機械工業デザイン賞(20)審査委員会特別賞−牧野フライス製作所

(2017/8/31 05:00)

  • 5軸制御立形MCと(左から)開発本部厚木V開発部V2グループの丹下氏と中安同マネージャ

【5軸制御立形マシニングセンタ D200Z】

先端のマシニングセンター(MC)である同時5軸MCを使った金型の製造は加工プログラムに3―4日、機械加工に2日ほどかかることがある。金型は一品一様がほとんど。量産品と異なり、次々と新しいプログラムの作成が生じる。時にプログラムの完成を待ち、工作機械を1日動かせないこともある。

特定の加工時に機械がプログラムに追従できずに削り誤ることもある。その際の修正はもっぱら手作業だ。開発陣の1人、中安和正マネージャは、「これを解決しないとトータルのリードタイムは縮まらない」と課題を指摘する。

開発機は主軸の重さが従来の半分。ワーク(加工対象物)を据え付けるテーブルの重さも半分に抑えた。追従性を落とす主要因が重量だからだ。軽くしながらも剛性を確保するため、例えば主軸では、使うアルミニウムを多めにするなど材料の配分を見直した。

機械全体の小型化にも成功しており、設置面積を同等機のほぼ半分の1坪ほどに収めた。日本の狭い金型工場を意識した設計だ。周辺装置をフレーム内に入れ、見た目もすっきりとさせた。ドアの開閉方式を工夫し、自動工具交換装置(ATC)に正面から接近できる。正面であれば自動化機器を側面に後付けしやすい。また、プログラムを機械制御装置で分析し、リアルタイムに機械に合った滑らかな動きに自動修正する新機能を開発した。

手作業をなくす機械だが、開発現場は手描きの設計にこだわった。牧野フライスは20年ほど前から3次元CADソフトウエアを活用しているが、軽く、小さくというコンセプトを、蓄積した3Dデータの延長線上ではなく、柔軟な発想でカタチにする試みだ。

設計担当の丹下圭輔氏はおよそ150枚を描いた。これを指示した当時の開発本部長に毎日のようにみせた。「問われた質問の答えに窮するたび、自分の理解不足に気付かされた」と振り返る。

原点回帰とも言える新しい開発アプローチで、金型製造の課題を解決する機械に仕上がった。(六笠友和)

(おわり)

(2017/8/31 05:00)

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