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[ 科学技術・大学 ]
(2017/10/15 12:00)
溶融スズ、再生エネの熱貯蔵に活用
これまでより数百度C高い1400度Cの高温で稼働するポンプ装置を、米ジョージア工科大学などの研究チームが開発した。部品にセラミックスを使った機械式ポンプで、溶融スズのような極めて高温の液体の輸送を目的としている。溶融金属を媒体としたエネルギー変換やエネルギー貯蔵システムに将来応用できるという。
応用面でもっとも期待されるのが再生可能エネルギー用のグリッドストレージ(系統電力用エネルギー貯蔵システム)。太陽光や風力で発電されたエネルギーを熱エネルギーの形で溶融スズや溶融シリコンに蓄えておき、必要な場合に電気エネルギーに変換する仕組みだ。蓄電池など既存のエネルギー貯蔵システムに比べ、低コストで実現できる可能性があるとしている。
今回の研究はジョージア工科大機械工学研究科のアセガン・ヘンリー助教と大学院生のキャレブ・エイミー氏らが中心となり、パデュー大学やスタンフォード大学と協力して実施した。成果は12日の英科学誌ネイチャーに掲載された。
媒体の温度が高ければ高いほど高効率で低コストの熱エネルギー貯蔵やエネルギー変換が行える一方、より高温の溶融金属に耐えられるポンプ装置やパイプの製造方法が大きな課題となっていた。
そこで研究チームではセラミックスに着目。セラミックスはこうした機械システムには脆いとみられていたが、入念な設計を施した上、精密機械加工で部品を製造。柔軟性があり強度の高い黒鉛をポンプやパイプ、ジョイントの接合部にシール材として採用した。
こうして直径36ミリメートルの歯車を組み込んだギアポンプを完成。歯車の回転により高温の液体スズが吸い出されるようにし、高温環境でのポンプの酸化を防ぐため、窒素雰囲気中で72時間連続で稼働させた。ポンプの回転速度は毎分数百回転。その間の平均温度は1200度C、最高温度は1400度Cを超えた。
材料には機械加工しやすい窒化アルミニウムセラミックスの「シェイパル(Shapal)」を採用し、実験でポンプは磨耗に耐えたという。研究チームではより硬度の高いセラミックスの方が磨耗に強いと見て、炭化ケイ素を使ったポンプの製造にも取り組んでいる。
一方、エネルギー貯蔵以外の応用事例としては、二酸化炭素(CO2)を発生させない水素の製造システムも想定。メタンガスを溶融スズに吹き込むことで、CO2を発生させずに水素と固体の炭素を生成できるという。
エネルギー貯蔵に溶融塩が使われている現在の集光型太陽光発電システムへの応用も視野に入れている。溶融スズとセラミックスの組み合わせで、より高い温度でエネルギーを貯蔵できるようになり、劣化が少ない上、効率向上とコスト低減につながるとしている。
(2017/10/15 12:00)