[ 自動車・輸送機 ]

【電子版】日産・西川社長、ゴーン経営の影響否定

(2017/11/17 22:00)

  • 調査結果報告書提出後の記者会見で、謝罪する日産自動車の西川広人社長(手前)ら(時事)

現場担当者は違反認識 管理職は気付かず

 日産自動車は17日、新車の無資格検査問題に関する調査結果をまとめた報告書を公表した。国内全6工場のうち、京都府の工場を除く5工場で無資格検査が常態化していたとし、多くは1990年代、栃木工場(栃木県上三川町)では38年前の79年から行われていた可能性を明らかにした。検査現場の人員不足や規範意識の低下を背景に、長年にわたり不正が続いていた実態が浮き彫りとなった。

 西川広人社長は17日、本社で記者会見し「今後の取り組みを通じて信頼を回復したい」と述べた。自身の経営責任として今年度末まで役員報酬の一部を自主返納すると表明したが、「事業を正常化させることが使命だ」として社長職にとどまる考えを繰り返した。

 高い数値目標を掲げるカルロス・ゴーン会長流の経営が一因になったとの見方に対しては、それ以前から不正はあったと強く否定。ゴーン会長も報酬を自主返納しているかどうかについては言及を避けた。

  • 国土交通省の奥田哲也自動車局長(右)に、無資格検査問題の報告書を提出する日産自動車の西川広人社長(時事)

 報告書は、無資格検査が常態化していた原因について、有資格者の人員不足を指摘。有資格者の多くは違反と認識していたが「工場と本社の管理者層は気付いていなかった」とし、「完成検査に対する管理者層の意識の薄さ」が規範意識を低下させたと結論付けた。

 有資格者を社内で認定する試験では、▽問題と答案を一緒に配布▽教材を見ながら受験▽答案提出後に間違いを訂正して再提出する―といった不正行為が判明。また、各工場では長年にわたり、国土交通省の定期監査を受ける際、現場監督者の指示で無資格者を完成検査工程から外して不正の発覚を逃れる隠蔽(いんぺい)を行っていたことも明らかになった。

 日産は再発防止策として、完成検査員の増員に加え、今年度末までに顔認証による入出場管理を導入し、検査場所への人の出入りを制限するなどの対応を取る。

 西川社長は記者会見に先立ち、国交省を訪問し報告書を提出。同省は日産への処分を検討する。(時事)

西川日産社長 会見の一問一答

記者会見で厳しい表情を見せる日産自動車の西川広人社長記者会見で厳しい表情を見せる日産自動車の西川広人社長(時事)

 日産自動車の西川広人社長が17日行った記者会見の一問一答は次の通り。

 長年の不適切な完成検査で信頼を裏切り、改めて深くおわび申し上げる。月額報酬の一部を10月から年度末まで自主返納する。経営会議に属する役員も同様に実施する。

―不正検査がなぜ常態化したか。

 製造現場の実態と完成検査の運用の仕組みに大きなギャップがあるまま長年放置してきたことが問題だった。

―人手不足が原因か。

 (不正検査が)習慣化したのは1989年。人手不足が原因で始まったとは決めつけにくい。ただ、完成検査員の所要人員に注目して配置してこなかったことが問題を大きくした。

―経営責任は。

 この状態からの挽回、信頼を回復して事業を正常化させることが使命であり、私の責任だ。私は執行の立場で、(進退は)取締役会が決める性格のものだ。

―ゴーン会長に責任は。

 常態化が書面で確認できるのは89年からで、ゴーン氏の社長就任よりはるか前。ゴーン経営に起因したということはない。過去からの責任を問うのは難しい。(時事)

ゴーン氏「今を立て直すのはあなたの責任」

 日産自動車の西川広人社長は、無資格検査問題をめぐる経営責任の一環として、月額報酬の一部を10月から半年間自主返納する考えを示した。他の役員も同様の対応を取るという。ただ、減額の対象者と割合は明らかにせず、長年トップを務めるカルロス・ゴーン会長の経営責任も否定。責任の所在はあいまいとなった。

 「(不正は)日産リバイバルプラン以前から常態化していた」。仏ルノーから送り込まれたゴーン氏が日産再生計画(リバイバルプラン)を発表したのは1999年10月。西川社長は不正はそれ以前からあることを強調した。

 ゴーン氏は2000年から今春まで約17年にわたって社長を務め、現在も会長として大きな影響力を持つ。この間、日産は生産・販売台数を2倍以上に拡大。17年上半期(1~6月)にはルノー・日産・三菱自動車連合の合計販売台数で初の世界首位に立った。16年度の役員報酬は、ゴーン氏が11億円、西川氏が4億円に迫る。

 しかし一方で、「コストカッター」の異名を持つゴーン氏の経営改革は、生産現場にプレッシャーをかけ続けた。品質、生産コストなどの観点から国内外の工場の実力を常に比較するようになったからだ。各工場は生産効率を競い、完成検査でも効率を優先。無資格者を活用する「あしき習慣」が助長された面は否めない。

 西川氏は「過去からの責任を問うのは難しい」とゴーン氏をかばった。そのゴーン氏は検査不正の一連の会見にはこれまで一度も姿を見せず、西川氏には「今を立て直すのはあなたの責任」と伝えているという。(時事)

(2017/11/17 22:00)

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