[ 化学・金属・繊維 ]

【電子版】三菱マテ子会社、不適合品274社に拡大 親会社の関与否定(更新)

(2017/11/24 21:00)

  • 竹内章社長は三菱マテリアル(親会社)の関与を強く否定した(ブルームバーグ)

アルミ不適合品は16社

 三菱マテリアルの竹内章社長は24日、製品検査データの改ざん問題で記者会見し、子会社の三菱アルミニウム(東京)が顧客の求める品質や社内基準を満たさない「不適合品」を16社に納入していたと明らかにした。23日に公表した三菱電線工業(同)と三菱伸銅(同)の分を合わせ、納入先は計258社から274社に拡大。竹内社長は「多くの皆さまに多大な迷惑を掛けたことを深くおわびする」と陳謝した。

 竹内社長は経営責任に関し、「早期解決を指導し、グループ全体の品質管理を強化するのが私の責任だ」と話し、引責辞任を否定。不正が組織的かどうかや、いつから行われたのかについては「外部の調査委員会が調べており、答えられない」と述べるにとどめる一方、「三菱マテリアルの関与はなかった」と語った。

 三菱電線は今年2月に不適切行為を把握しながら10月下旬まで出荷を続け、公表まで約9カ月かかった。竹内社長は「(納入先が)全て判明してから速やかに公表するのが適切だと判断した」と釈明した。

 一方、三菱アルミによる改ざんは昨年11月に判明。輸送や電機、建材業者といった納入先に説明し安全確認したため、「解決済みの案件」(同社長)として公表してこなかった。

 三菱電線の納入先には防衛省も含まれ、自衛隊の航空機や艦艇にも不適合品が使用されていた。竹内社長は「防衛省の認定基準に適合していない製品もあった」と述べた。三菱マテリアルは24日までに、現状について同省のほか国土交通、経済産業両省に伝えた。年内をめどに調査結果を報告する。

 三菱マテリアルは10月末に社内に対策本部を設置し、他に品質問題がないかグループ全体で確認を進めている。三菱電線と三菱伸銅は11月中旬に社外の弁護士を含めた調査委を設けた。三菱伸銅は年内に報告書を公表するが、三菱電線は納入先が229社に上り、調査範囲が広く、年明け以降になる見通しだ。(時事)

確認急ぐ自動車メーカー、トヨタなど国内に直接納入なし

 三菱マテリアルグループ3社で検査データの改ざんが発覚したことを受け、自動車や航空機のメーカーは24日、対象の部材が使われていないかどうか確認に追われた。

 マツダ、ホンダ、ダイハツ工業は、車両生産工場に3社からの直接納入はなかった。トヨタ自動車とスズキは、国内工場で直接納入がないことを確認したものの、海外工場では調査中。自動車各社は、他社から仕入れた部品などに対象の部材が使用されていたかどうかについても調べている。

 一方、三菱自動車、日産自動車、SUBARU(スバル)は、国内外の工場で納入実績があるかどうかについて確認を急いでいる。

 また三菱重工業は、子会社の三菱航空機(愛知県豊山町)が開発する小型ジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)について、「使用の有無を含め調査中」(広報担当者)と説明している。ホンダは、米子会社が製造する小型機「ホンダジェット」に対象の部材が使われているかどうかを調べている。(時事)

不正の意識希薄、未公表の不正の存在認める

  • 経営陣は未公表の不正「解決済み案件」の存在を認めた(竹内章社長、ブルームバーグ)

 神戸製鋼所がアルミ製品などの品質を偽装していた問題に続き、三菱マテリアルの子会社3社でも検査記録データの改ざんが発覚した。日産自動車やSUBARU(スバル)では資格のない従業員に新車の完成検査をさせるなど、日本のものづくりの強みである「高品質」を疑わせる不正行為が相次いでいる。日本製品全体のブランド力の低下を避けるため、産業界全体で危機感を共有し、品質管理を徹底することが求められそうだ。

 「解決済みの案件」。三菱マテリアルの竹内章社長は24日の記者会見で、問題解決へ子会社を指導、監督する考えを示した上で、こう語った。子会社3社のうち1社の改ざん製品は、納入先との間で安全性の確認が終了したため解決済みという。三菱マテリアルが設置した対策本部の小野直樹本部長(副社長)は「解決してきた案件は他にもある」と、未公表の不正の存在すら認めた。

 こうした経営陣の当事者意識と問題意識の希薄さは、近年の不正に共通する。16年に発覚した三菱自動車の燃費試験に絡む不正行為は、経営陣が現場に目配りしなかったこともあり、25年間に及んだ。日産の無資格検査は38年前からで、経営陣は現場の実態を把握せず、管理責任も果たしてこなかった。

 世耕弘成経済産業相は24日の閣議後会見で、三菱マテリアルの不正について「あくまで個社の問題」と語ったが、今後は日本企業全体に悪影響が及ばないとも限らない。日本製品への信頼をつなぎとめるため、メーカーの経営陣には危機感と再発防止に向けた決意を共有することが求められる。(時事)

三菱マテリアル会見の一問一答

 三菱マテリアルの竹内章社長らが24日行った記者会見の一問一答は次の通り。

 竹内社長 多くの皆さまに多大な迷惑を掛け、深くおわびする。このような事態が再び発生することがないよう信頼回復に努める。

―公表が遅れたのは。

 社長 子会社から10月下旬に報告があった。納入先が全て判明してから公表するのが適切と判断した。

―不正の背景は。組織ぐるみか。

 社長 調査委員会を設置し、事実関係の解明、原因究明に当たっている。調査結果を待ちたい。

―2月に不適切行為を把握していた。不具合の可能性を認識しながら出荷を続けたのか。

 村田博昭・三菱電線工業社長 結果的にはそうだったということになる。出荷を止めると混乱を招き、真の原因が分からなくなると思った。

―経営責任は。

 竹内社長 私の責務は問題を早期に解決し、再発防止を早期に実行することにある。

―三菱マテリアルの関与はなかったのか。

 社長 全くなかった。

(時事)

(2017/11/24 21:00)

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