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国際ロボット展/人に寄り添う「協働ロボ」(動画あり)

(2017/11/30 05:00)

人手不足などを背景に世界でロボットの需要が拡大する中、29日に東京・有明の東京ビッグサイトで開幕した「2017国際ロボット展」。会場では垂直多関節ロボット、水平多関節(スカラ)ロボット、自動搬送車(AGV)など多彩な産業用ロボットが出そろった。安全柵を設けることなく作業者の隣で動く「協働ロボット」では新規参入や製品群の拡充が相次ぐ。各社は多様化するニーズに豊富な品ぞろえでも応えている。

【川崎重工業、熟練の技も自動化】

川崎重工業は人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を活用し、熟練技術者の動きを自動化できるロボットシステム「サクセサー(継承者)」を披露した。熟練者が専用操作装置でロボットを遠隔操作し、操作装置に感覚的に作業を覚えさせる。製品の組み立て・艤装(ぎそう)など人の感覚が必要な工程や、頻繁に生産品種が変わる中小企業でも導入しやすくし、ロボットを通じて、熟練作業の技能伝承も可能にした。

(サクセサーによる車体塗装デモンストレーション)

【ABB、単腕型の協働ロボ】

スイスのABBは29日、単腕型の協働ロボットを2018年に発売すると会場で発表した。既存の組み立てラインに導入しやすいのに加え、壁に取り付けたり、つり下げたり、さまざまな場所に設置できる。可搬質量は500グラム。人間工学に基づいたロボットで、安全対策に配慮した。会場では両脇に新型ロボット、中央に双腕型ロボットを置き、連動した動きを披露した。中小企業にもロボットのエントリー(入門)機として訴求する。

【三菱電機、食品工場で活躍】

三菱電機の新開発の小型協働ロボットは、弁当の食材盛り付けを実演した。食品工場で人と並んで作業する現場を想定する。人手不足対策に役立ちそうだ。荒井高志ロボットテクニカルセンター長は「食品工場などでは人手による作業が残る」と指摘し、「そうした場所で活躍できる」と期待する。ティーチングやプログラミングを分かりやすく実施する新機能を備えており、ロボットに不慣れでも扱いやすいという。

【ファナック、可搬質量15キログラム】

ファナックは可搬質量15キログラムの協働ロボット「CR―15iA」を開発した。同35キロ、7キロ、4キログラムの機種をすでに展開しており、ラインアップを拡充した。既存機種と同様に、国際標準化機構(ISO)の安全認証を取得。組み立てや搬送の補助作業などでの活用を見込む。会場では移動が容易な台車に載せたタイプを展示。新開発の3Dビジョンセンサーもアームの先に搭載し、部品を取り出して箱にまとめるキッティング作業を実演した。

【不二越、協働ロボ初公開】

不二越は同社初の協働ロボット「CZ10」を世界初公開した。安全性に強くこだわった設計を採用。湾曲するようなアームとし、あえて隙間を設けることで、人が指などを挟まれないようにした。また、衝突検知のセンサーを全6軸に搭載し、あらゆる方向から人や物の接触を把握し、動作を停止できる。会場では、スマートグラスと融合させた実演やクレーンゲームなどの展示で、CZ10の特長を体感できるように紹介している。

【KUKAロボティクスジャパン、日本初披露】

KUKAロボティクスジャパン(横浜市保土ケ谷区)は、塗装工程を自動化するロボット「レディー・トゥー・スプレー」を日本初披露した。塗装機器世界大手の独デュルと協力し、塗装専用ロボとして、スプレー部分や塗装コントローラーといった周辺部品をあらかじめパッケージ化した。ロボット以外の準備の手間を省き、素早く既存の生産ラインに組み込める。使い勝手の良いシステムとして、一般産業用途での採用を働きかける。

【安川電機、手際よく梱包】

安川電機は双腕型の人協働ロボットを参考出品した。最大可搬質量5キログラム、最大リーチ900ミリメートルで、組み立て作業のような重量物を扱う工程もロボットに置き換えられる。モーターの梱包(こんぽう)作業の実演では、人のような2本の腕で箱にモーターを入れ、ふたを閉めながらテープを貼るという作業を手際よく披露した。「これまでロボットがやってこなかったような作業でも置き換えを提案する」(ロボット事業部)考えだ。

【デンソーウェーブ、多指ハンド装着】

デンソーウェーブ(愛知県阿久比町)は、人の手に似た「多指ハンド」を装着した双腕型ロボットを出展した。ディープラーニング(深層学習)と仮想現実(VR)を生かして、人に作業を教えるのと同じように、細かい動きを覚えさせることができる。そのため、高度なプログラミングをすることなく利用できるのが特徴。ブースでの実演では、切った野菜をつかみながら、器用に盛り付けてサラダを作った。

【オムロン、ロボ組み合わせ】

オムロンは部品供給から出荷まで一連の工程にロボットを使った例をアピールしている。異なるロボットを組み合わせ、食品業界などで要求される多品種変量生産に対応させる。包装工程などに使われるパラレルリンクロボットでは、業界唯一の4本アーム型を開発し、最高水準の可搬質量や動作速度を実現。工程間運搬には無人搬送車(AGV)を活用し、さらに100台規模のAGVを同時制御することで、他社と差別化している。

(部品供給から出荷までをロボットで)

【ダイヘン、AI搬送ロボ】

ダイヘンが公開したのは「AI搬送ロボット」。目的地と作業内容の指示で、人工知能が経路を判断して自律走行し、質量700キログラムまでの荷物を自動で運ぶ。独自開発の足回りで多少段差があっても、重量物をしっかりと支え、安定姿勢で搬送できる。部品搬送や冷凍倉庫内搬送、車のフレーム搬送など多用途ですでに引き合いがある。展示ブースでは、ハンドリングロボットなどの自動化機器と組み合わせたシステムとして提案している。

(AI搬送ロボットと自動化機器と組み合わせたシステムのデモンストレーション)

(2017/11/30 05:00)

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