[ オピニオン ]

産業春秋/ハイリスク研究

(2017/12/21 05:00)

「成果を出すのが難しいリスクの高い研究テーマに取り組む研究者が減っている」という話を聞いた。特に若手は、リスクの低い無難なテーマを選ぶ人が増えているという。

仏ストラスブール大学名誉教授のジャン・ピエール・ソヴァージュさんは若い頃、水の分解研究チームに参加していた。米国から来た研究者と議論しているうちに、知恵の輪のように絡み合った分子「カテナン」を作成する方法をひらめいた。

ただ専門分野は無機錯体化学で、その形状を作り出す技術を持たない。有機化学合成を専門とする友人の研究者に話すと「一緒にやろう。自分も違う領域に取り組みたい」と話はとんとん拍子に進んだ。

最初に研究論文を発表したのはわずか1年後。2016年には「分子機械の設計と合成」でノーベル化学賞を受賞した。「2人の研究者と出会わなければ、新たな扉を開けなかった」とソヴァージュさんは振り返る。

手堅い道筋を外れる不安は、何かを生み出す期待とは裏腹。前向きな決断を後押しするのは、他者からの刺激と楽観的な姿勢だろう。「研究者にはリスクをとって新分野に乗り出す勇気が絶対に必要だ」。ソヴァージュさんの励ましは研究者だけでなく万人にも通じそうだ。

(2017/12/21 05:00)

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