[ トピックス ]

【電子版】経営戦略としてのIoT・第4次産業革命~ビジネス・システム・イノベーションの時代~(13)

(2018/3/2 05:00)

【国際物流関連のビジネス・システム・イノベーション】

貿易・物流に関する国際標準EDIの早期の普及

国際物流業務、厳密には国際貿易物流業務は、最も早期に国際標準のEDI(Electronic Data interchange:(EDIFACT、ANSIx.12)が発達した領域である。インターネットの普及によりさらに活用は安価になって普及している。

国際標準のEDIを採用している税関や港湾局、荷主、通関事業者他の関連主体は、世界中の会社との直接の情報交換が可能となっている。つまり、貨物のS/I(輸送指図:シッピングインストラクション)から、船腹のブッキング、通関の申告、貨物の追跡(今、どこにどういう状態であるのか(通関はリリース他のされたのか、まだか等)、などの問い合わせ情報までが、全てオンラインで自動的にやり取りできる仕組みとなっている。

例えば、GXS社(現在は買収されOpentext:かつてGEのVAN事業だったGEIS)やDescartes社のサービスを活用すると、世界中どこの会社とも貿易物流に関わる情報交換(ブッキング、トラッキング、決済まで)が可能となっている。

一方、日本ではこうしたグローバルな標準がそのまま活用できる仕組みにはなっていない。また、海外から日本国内のネットワークに参加できる状態にもない。このため、このような国際標準のEDIを駆使した国際貿易物流サービス事業のネットワークには事実上参加していない、と言われても仕方が無い状況にある。こうした状況に危機感を示し、日本の国際貨物取扱事業者や船会社などではシステム開発や運用を既に海外に移管する企業も出てきている。

コンテナターミナル運営のグローバルサービス

この領域でもっともグローバルな事業展開に成功したのはシンガポール港湾局(PSA)である。シンガポールPSAは、国際標準EDIを活用したコンテナターミナルの運用サービス事業を、ソフトウェアを活用してグローバルに展開することに成功した。いわば、運輸事業における第4次産業革命の実現である。

PSAは、いわゆる貿易物流関連手続きに関わる多数の関係主体の間での情報交換の仕組みが1989年に国際標準化されたことを活用し、荷主、船会社、フレートフォワーダー、カスタムブローカー、税関等とコンテナターミナルとの間のコミュニケーションを全て国際標準EDIで行うことに取り組んだ。さらに複雑で巨大な規模のコンテナターミナルのハンドリング業務に対し、最適化アルゴリズムを駆使した最先端のコンテナターミナルのオペレーションシステムを構築した。

 仕組みの概要は、①48時間前にコンテナ船の積み付けプラン(ストウプラン)を船会社から申告させ、②引き取りに来るトラックとは分単位での引き取り時間の予約を確定させ、③大口コンテナ船会社には、バーチャル・デディケーテッドバース(仮想専用バース)サービスを提供し、待ち時間を事実上ゼロにコントロールする。

一方で、④コンテナの搬入予定時刻とトラックの引き取り時刻から、全コンテナのハンドリングの最適化計算を実行しつつ、常時コンテナターミナルでのコンテナのシャッフリングを行い、⑤トラック引き取り時刻には、6~8段積みのコンテナの一番上に引き取るべきコンテナを配置しておく仕組み、である。高度なオペレーションにより、⑥シンガポール港では輸入貨物の98%は24時間内の引き取りとなり、⑦コンテナヤードの高度利用と、⑧1バース当たりの取扱量の最大化(日本のコンテナターミナルの10倍以上)を実現している。

さらに、PSAは、このコンテナターミナルの運用サービス事業をグローバルに展開することを考えた。いまや、香港のHITターミナと並び、世界のコンテナターミナル運営をサービス事業として受託する事業展開を行い、大成功している。いわゆるシンガポールのソブリンファンド、TEMASEK(20兆円規模のファンドで業績もよい)の投資銘柄の1つとなっている。

(隔週金曜日掲載)

【著者紹介】

藤野直明(ふじの なおあき)

野村総合研究所 主席研究員

専門はSCM革新のコンサルティング。近年、第4次産業革命やIoT、オムニチャネルリテイリングでの調査研究・コンサルティング活動を、民間企業、産業政策双方の視点で行っている。日本オペレーションリサーチ学会フェロー、オペレーションマネジメント&ストラテジー学会理事、ロボット革命イニシアティブ協議会WG1情報マーケティングチーム・リーダー

(2018/3/2 05:00)

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