[ オピニオン ]
(2018/3/23 05:00)
150年前の明治元年は、今日なら号外が飛び交うような大事件が相次いだ。中でもトップニュースは、旧暦3―4月にかけての江戸開城交渉だろう。
幕臣の勝海舟と、薩摩藩の西郷隆盛との間で交わされた約定により江戸は戦火を免れ、新政府側の勝利を決定づけた。当初は大阪遷都も検討されたというから無血開城がなければ明治日本の姿はよほど違ったものになり、殖産興業も遅れたかもしれない。
維新の英雄2人は江戸の薩摩藩邸で対面した。破談になれば英仏両国を巻き込んだ市街戦が避けられない情勢の中で、会談は粛々と進んだと勝の回顧録にあるそうだ。約定通り江戸城が明け渡されたのは4月11日、太陽暦だと5月3日に当たる。
現代日本の平和を危うくするのは、内戦ではなく朝鮮半島情勢だ。米国のトランプ大統領と、北朝鮮の金正恩委員長のトップ会談の行方はまだ分からない。しかし実現すれば、それは和戦を分ける歴史的なものになるかもしれない。
残念ながら日本のリーダーは足元の不祥事の火消しに追われている。勝や西郷のような英雄不在の中で、東アジアの新たな歴史が綴られる。傍らで見守る日本の市民も産業界も、どうか戦火を避けてほしいと切実に願っている。
(2018/3/23 05:00)