[ 自動車・輸送機 ]

【電子版】EV生産の意向なし マクラーレン、伝統主義戦略の勝算

(2018/3/22 16:30)

 大手自動車会社の幹部が業界の最新トレンドに精通していないと認めることはめったにない。だが、英マクラーレン・オートモーティブのグローバルセールス担当ディレクター、ジョリオン・ナッシュ氏にはそうすることに全くためらいがない。

 同氏はジュネーブで、電気自動車(EV)レースの世界シリーズ「フォーミュラE」についてほとんど知らないと述べた。一方、フォーミュラEが昨年拡大されてから、アウディやBMW、ジャガー、ポルシェ、ルノーなど他の多くの自動車ブランドが同シリーズに参加の意向を表明している。

 私はナッシュ氏に、世界のフォーミュラカーレースにEVが走行することについて一般的にどう思うかと尋ねた。同氏は「私は伝統主義者で、トラックを周回するエンジンの音を聞くのが好きだ。フォーミュラEはそれを提供していない」と答えた。

  • マクラーレンのナッシュ氏は近い将来にEVを生産する意向はないと語った(McLaren 720S、ブルームバーグ)

 また、4年後にはマクラーレン車の半分がハイブリッドになる見通しだが、同社が近い将来にEVを生産する意向はないと同氏は語った。

 ナッシュ氏は「われわれは技術を証明するだけに車を生産することを望んでいない」と語った。マクラーレンは近未来的なコンセプトカーではなく、「セナGTR」のような限定版や1回限りのモデルを発表することが多い。

 一方、「ニオ」など比較的知名度の低いブランドから、コルベットやメルセデス・マイバッハ、ポルシェ、ロールスロイス、フェラーリなど大手ブランドに至るまで、競合はこぞって完全電動コンセプトカーの生産を計画しているか、もしくはすでに生産に着手している。

 これに対し、マクラーレンは引き続き、レース好きが大半を占める熱心な顧客層との関係を重視している。これらはスピード狂の若者やF1ファンで、代替エネルギー利用という名目の下でスピードや性能を犠牲にすることを嫌がる。

 EV生産でしばしばハードルになるのは重量だ。マクラーレンが製造するようなスーパーカーにとっては特に重要となる。例えば同社の「720S」や「675LT」は、パワーウエートレシオ(重量出力比)が完璧に近いと称賛されている。

  • マクラーレンは今後もレース好きな顧客層との関係を重視するという(McLaren 675LT、ブルームバーグ)

 EV用バッテリーは通常のアルミニウム製燃焼エンジンよりもかなり重く、車の走行力学を変化させる。現時点では、大きな馬力を提供する高密度バッテリーを搭載するEVか、長い走行距離を提供するバッテリーを搭載するEVのいずれかを製造することは可能だが、その両方を兼ね備えた車を製造するのは不可能だ。

 ナッシュ氏は「十分なパワーと走行距離の両方を提供できる技術が開発されるまでは、エキサイティングな完全電動スーパーカーを実現するのは難しいと思う」と語った。(ブルームバーグ)

(2018/3/22 16:30)

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