[ その他 ]

開発の舞台裏 中小企業優秀新技術・新製品賞(3)優秀賞−アタゴ

(2018/4/20 05:00)

小型・低価格品を農家に

  • 田中開発部課長とPAL―光センサー

◆ポータブル非破壊糖度計PAL―光センサー

アタゴ(東京都港区)が開発した「ポータブル非破壊糖度計PAL―光センサー」は、同社が10年越しの思いをかけて完成させた。既存の糖度計は、果物を液体状に加工しないと糖度を計測できなかった。

開発した田中政之介開発部課長は、入社後に光学分野で博士号を取得。同社の糖度計測用旋光計を小型化させた「RePo―1」を開発した後、2015年頃から屈折糖度計の開発を任された。「それまで携わった製品とは全然違っており、一から勉強し直した。学会などにも参加し、関連分野の専門家の知見も吸収した」(田中課長)と振り返る。「他社製品と同じ大きさでは意味がない。小型で農家の手が届きやすい価格で、果物の商品価値を維持できる製品でなければ」(同)と、使命感に燃えた。

これまで同社は、液体など標準物質と呼ばれる、環境によって性質が変わらないものを計測する測定機の開発がメーンだった。今回の糖度計の測定対象である果物は生もの。小型、非破壊、低コストを目指すが、壁は厚かった。「中でも(光源の)LED(発光ダイオード)のコストや温度変化の考慮が難題だった」(同)という。LEDは仕入れ担当者と連携して海外まで探し、温度は5度10度と刻み、パラメーターを複数組み合わせるなどの工夫をした。

数多くの部品で構成されるため、一つひとつにほんの少し変化があるだけで止まってしまう。目視では確認できないバリが重要な部品を破損させてしまうなど、気が遠くなるほどの細かな問題も田中課長は地道に解決した。

データを一つとるために使用したサンプルの果物は、1品種当たり100個以上。腐敗するとデータが取れなくなるため、軍手や冷蔵保存などで慎重に管理した。「サンプルにここまで投資したのは初めて」(同)という。

田中課長は「糖度に限らず、いろいろなものを非破壊で測れる製品を生み出したい」と意気込む。「たとえ時間を要しても、やろうと思えば、諦めなければできる」(同)と、笑顔を見せる。(高橋沙世子)

(2018/4/20 05:00)

中小企業・地域経済2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン