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開発の舞台裏 中小企業優秀新技術・新製品賞(5)優秀賞−アイディールブレーン

(2018/4/24 05:00)

金属流動利用で高耐久

  • ミーティングをする佐藤社長(左から2人目)とスタッフ

木造住宅用制震ダンパー「ミューダム」

頭脳集団企業―。アイディールブレーン(東京都千代田区)の佐藤孝典社長は清水建設の元技術研究所部長。同社の「事業家公募制度」導入時に真っ先に名乗りを上げ、最初の社内ベンチャーとして現在の会社を興した。2001年8月に会社を設立。横浜マリンタワーが採用した水パックによる制震技術やH2ロケットに採用された折り畳みの工夫などを手がけた佐藤社長は、開発者として業界での知名度は高い。

アイディールブレーンの強みは建築工学博士の社長をはじめ、多くが博士号を持つ研究者であること。そのため、建築構造物の実験をする装置も自前で開発している。佐藤社長は「うちは営業マンも技術者。信用され、理解できて営業するから顧客から信頼も得られる」と自負する。

今回、優秀賞に輝いた製品は、摩擦の一種である金属流動を利用した木造住宅用の制震ダンパー「ミューダム」だ。「金属の摩擦係数を曽田範宗氏の著書で調べていたら、アルミニウムの係数が鉄の0・45よりも高いことに気づいた。アルミなら、さらに強く結びつけられる」(佐藤社長)。この仮説を検証した結果がミューダムだ。

住宅に使えば、通常の筋交い補強に比べて最大で揺れ幅を80%も低減できる。特殊なアルミと鋼板が接触面で焼き付き、完全密着しながら変形する。

鋼管の内側と外側をアルミ板で挟んでおり、強度な地震が発生すれば、その接合部に圧力がかかり、金属流動が起きる。耐久性が高く、アルミ板が変形しても摩擦抵抗力を保持するので、性能が落ちることもない。

「一企業の保有技術として終わってしまうよりも業界全体を良くしたい」(同)という思いは今も強い。高校時代に理論物理学を志した佐藤社長の夢は、建築構造に金属材料の物性などを生かす製品開発にたどりついたが、まだ途中。「課題解決が発明の素」(同)とする開発物語に終わりはなさそうだ。(鈴木景章)

(2018/4/24 05:00)

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