社説/大都市での台風防災 鉄道運休を判断のサインに

(2019/10/14 05:00)

首都圏を直撃し、暴風と豪雨をもたらした台風19号は、東海から関東甲信、東北地方にかけて大きな傷跡を残した。河川の氾濫や土砂災害、停電などの被害にあわれた方に心からお見舞いを申し上げる。分けても9月の台風15号による甚大な被害と長期の停電に苦しめられた千葉県の方々の、再度の生活難が気遣われてならない。

東京地方でも初めて大雨特別警報が発令され、23区内で多摩川が氾濫した。都心を流れる神田川では、千代田区飯田橋で氾濫危険水位を最大40センチメートルも超える増水を記録。残念ながら日本のビジネスの中枢も天災と隣り合わせであることを改めて印象づけた。

天候回復とともに、優先すべきは行方不明の方の安否の確認と、家や職場を失った方の生活再建である。次いで、大都市を直撃したこの台風の教訓を将来に生かしたい。

今回の台風では、気象庁が「(死者・行方不明者が1200人を超した)狩野川台風に匹敵する記録的な大雨となる恐れもある」と異例の事前警告を発した。これを受けて鉄道をはじめ交通機関が計画運休を発表。また百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、レストランチェーンなども、臨時閉店や営業時間短縮を早々に決めた。

こうした動きが“分かりやすいサイン”となり、都市住民の備えや自主的な避難、企業の従業員の帰宅の判断にプラスに働いたことは特筆される。公的機関の発する警報や避難情報以上の役割を果たした。今後もこうしたサインを活用する仕組みを整えて、企業が個々の事情に応じつつ「電車が止まったら休業」とするなど、判断の目安にできないものか。

一方で、身近な自治体がインターネットを通じて発する防災情報は、アクセス集中でつながりにくいケースが目立った。これは反省材料だろう。

地震や火災と違い、台風は備えやすい災害だ。それでも警戒行動のきっかけを判断するのは難しい。災害に強いしなやかな社会をつくるために“分かりやすいサイン”を活用したい。

(2019/10/14 05:00)

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