社説/金型取引の適正化 産業界全体で基盤技術守れ

(2019/11/22 05:00)

工業統計によると日本の2017年の金型生産額は約1兆5000億円。リーマン・ショック前の07年実績の9割まで回復した。現在の受注状況も堅調だ。ただ、全体の7割を占める金型専業メーカーは中小零細企業がほとんど。取り引きの適正化や人材不足、新技術への対応など個々の企業だけでは対応しきれない課題も多い。

取り引きの適正化は長年の課題だ。業界の声を受け、経済産業省・中小企業庁は「型取引の適正化推進協議会報告書(案)」をまとめ、24日まで意見を公募中だ。支払いの方法や期限、型管理に伴う責任の所在などの取引条件が曖昧だった点を指摘し、改善を求めている。知的財産の保護も盛り込まれた。

同報告書は金型を使用する部品メーカーと、発注元の取り引きが中心との印象は強い。ただ長期の分割も多かった金型メーカーへの支払いについて、参考例として「発注時半額、納品時半額の支払い」を明示したのは画期的だ。

型図面やデータ、製作技術・ノウハウについても「秘密保持契約の文書化」と「提供への適正な対価の支払い」が明記された。不適正な取り引きで金型メーカーが疲弊すればそのツケは最終製品にも及ぶ。産業界全体での順守を望む。

取り引き以外の課題も多い。人材不足は深刻で金型製作の自動化は不可避だ。加工自体の自動化は進んだが、大きく重い金型の工作機械への投入・取り出しの自動化は遅れている。金型でのIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)の活用も重要なテーマだ。産官学連携などの後方支援も必要だ。

金型技術はさまざまな産業の基盤の一つ。次世代自動車や先端IT、航空機や光学機器、医療機器など成長産業の競争力も左右する。ドイツは金型を重要技術と位置づけ、大学でも積極的に教育・研究し、産官学連携も盛んだ。中国などの技術的な追い上げも著しい。

日本としてこの基盤技術をどう強化していくべきか。25日の「金型の日」を前に、しっかりと考えていきたい。

(2019/11/22 05:00)

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