死因2位の「心不全」 患者を救う「心臓再同期療法(CRT)」の最新動向【PR】

(2020/3/23 00:00)

 心不全となった患者を救う「心臓再同期療法」(以下、「CRT」という。)のあり方に変化が訪れている。CRTとは心臓にペースメーカを植え込み、左右の収縮にばらつきが出ることで弱った心臓のポンプ機能を改善する治療法。多くの心不全患者で治療が施されているが、機器を植え込んでも効果がない患者も一定数いた。しかし、技術の進歩に伴い、患者一人ひとりに合わせた治療を提供できるようになってきたと専門医は説明する。治療の最前線を追った。

  • 東京医科大学 里見和浩医師

ペースメーカが効かない?

 「CRTは心不全の治療に有効な手段の一つですが、これまではペースメーカを植え込んでも効果がない“ノンレスポンダー”の患者さんが一定数いました」と東京医科大学病院の里見和浩医師は話す。「しかし、今は患者ごとに至適化した治療が提供できるよう機器が発展してきました。これからはノンレスポンダーを減らせるかもしれません」。

 心不全とはどのような病態だろうか。心筋梗塞や心筋症などが原因で全身に血液を送り出す心臓のポンプ機能が低下し、体に十分な量の血液が行き渡らなくなった状態が心不全だ。動悸や息切れなどの症状から始まり、重度に進行するとその生命予後は5年で50%と言われている。

 厚生労働省によれば心不全を含む心疾患の死亡者数は全国で年間約19万8,000人(2016年)。日本人にとってはがんに次ぐ死因だ。入院患者数も年間で1万人以上増加し続けている。「患者全体の30%以上が65歳以上。高齢化に伴い誰もが心不全の発症リスクがあります」と里見医師は指摘する。暴飲暴食やストレス、生活習慣の乱れから発症することが多いという。

  • 健康な人の心臓は洞結節という部位で1分間に約70回作り出される電気信号によって制御されている

 心不全は生活習慣の指導や投薬によって治療するが、「病態が重くなるとペースメーカを植え込みます」と里見医師。健康な人の心臓は洞結節という部位で1分間に約70回作り出される電気信号によって制御されている。電気信号は心臓内に張り巡らされた電気回路を伝わり、心房の筋肉を収縮させた後、左右の心室の筋肉を同時に収縮させる。このような順序で心臓全体が1分間に60-100回程度収縮し、効率よく血液を送り出す。

 心筋梗塞や不整脈などが原因で電気信号の伝達が正しい順路で行われなくなると、左右の心室の収縮にずれが生じる。もともと心臓の動きが悪い患者は、ずれの影響でますます血液を送り出せなくなり、心不全に陥ってしまう。そこで電気信号を発するペースメーカを体内に植え込み、心室が正しい順序で収縮できるようずれを“再同期”する。これがCRTの仕組みだ。

  • 除細動機能なし植込み型両心室ペーシングパルスジェネレータ(CRT-P)

 里見医師は、「CRTは全ての心不全の患者さんに適用できるわけではありません」と前置きした上で、「ペースメーカは心臓の負担になりにくいし、治療の効率が良い」と指摘する。左右の心室のずれを補正する治療法であるため、心臓に余計な負荷をかけにくく、合併症を除けば機器の植込みで心臓の機能が低下することは基本的にない。

悪化の前に生活習慣の見直し・投薬を

 一方、CRTの普及には課題もある。「電気信号の伝導がうまくいかない」「不整脈で正常な同期ができない」などが原因で機器を植え込んでも効果のないノンレスポンダーが約30%いるという。このようなノンレスポンダーを減らすため、「患者さんに合わせて治療を自動で至適化する機能が5年ほど前から発達してきました」と里見医師は話す。

 例えば心臓の状態を常にモニタリングし、電気信号の伝導時間などを自動で調節する機能がその一つだ。従来は超音波画像診断装置で心臓の状態を数カ月おきに確かめ、機器の設定を手動調整していたが、今では自動で患者個人の、またその時々の心臓の状態にあった電気信号の出し方を至適化している。里見医師はこの機能を「できるだけ人工的な再同期を避ける」ためだと説明する。「例えば右心室は患者さん自身の電気信号で収縮させ、それに合った電気信号をペースメーカでつくり出して左心室を収縮させる」。なるべく生理的な血液の循環をサポートすることで、長期的な予後が良くなるという。

 他にも不整脈の一種である心房細動を止める機能や心臓の状態を遠隔でモニタリングし、異常を早期発見する機能などがノンレスポンダーを減らすために貢献している。「患者さんごとの病態に合わせ、治療を自動的に至適化する機能が最近のCRTの特徴です」と里見医師。

 また、CRTを植え込まなくてはならないほど病態が重くなる前に生活習慣の改善や投薬で治療することも重要だ。実のところ、動悸や息切れといった症状に気づかない、もしくは我慢してしまう患者は多い。健康診断や人間ドックを欠かさず受け、体の不調を感じたら心臓を専門とする循環器病院を早期に受診することが必要だ。里見医師は「人間はなるべく自分が病気だと思いたくないものです。たとえ本人が認めたがらなくても家族が体力の低下に気づいたら病院の受診を勧めるべきです」と説く。

 04年から国内で治療が始まったCRT。高齢化に伴い、心不全の患者は年々増加を続けている。患者一人ひとりに合わせた治療の提供と異常の早期発見で守られる命が増えていく。

(2020/3/23 00:00)

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