産業春秋/「儀礼」の有り難み

(2020/4/21 05:00)

近所の農家から、タケノコをお裾分けしてもらった。早速、炊き込みご飯にしていただいた。旬の味は格別だ。やさしい甘みの中に、うっすらほろ苦さがあり、春の訪れを感じさせる。

竹は生命力にあふれている。手入れを怠れば、たちまちうっそうとしたやぶになる。冬でも青々と繁り、節目が規則正しく、まっすぐ伸びる。日本では古来繁栄の象徴とされてきた。

俳句の季語では「竹の秋」が春で、「竹の春」が秋にあたる。春に繁殖期を迎える竹は、タケノコに養分を奪われ、親竹の葉が黄葉する。秋にはタケノコが立派な若竹になり、親竹は青さを取り戻す。季語は自然をめでる観察眼から生まれたのだろう。

竹の節目のように、人々の暮らしにも区切りがある。新型コロナウイルスの感染防止のためには仕方ないが、卒業式から入社式、葬式まで、あらゆる「儀礼」が簡略化されるようになった。知己を亡くしても焼香一つあげられず、気持ちの整理がつかない人も少なくないのでは。

普段は頓着しなかったが、「儀礼」には過去を清算し、未来に向けて歩み出す知恵がある。コロナ危機の非常事態でも、季節は何事もなく巡って来る。「竹の春」には世の中が平穏を取り戻してほしい。

(2020/4/21 05:00)

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