社説/富岳、スパコン世界首位 利用価値の高さに意義がある

(2020/6/24 05:00)

速度だけでなく、今後の利用価値という総合力が評価され、世界首位に立ったことを喜びたい。

理化学研究所と富士通が共同開発を進めるスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、スパコンの計算速度を競う世界ランキング「TOP500」で、1位を獲得した。日本のスパコンでは2011年11月の「京(けい)」以来、8年半ぶりの快挙だ。

富岳は1秒当たりの計算速度が、約41・6京回(京は1兆の1万倍)と、2位の米「サミット」に約3倍の大差をつけた。速度だけでなく、産業利用でのアプリケーションの処理速度を評価する「HPCG」、人工知能の計算性能の「HPL―AI」、グラフ解析の「Graph500」なども1位となった。省エネ性能を競う「Green500」も19年11月時点で1位だった。スパコンに求められる総合的な力が評価されたわけで、日本の科学技術の底力を示したともいえる。

富岳の開発目標は、高いアプリケーション性能や省電力性の追求から始まった。それが結果として、速度でもトップとなったことに意義がある。世界の速度競争は米中が激しく競い合っており、富岳もいずれは抜き去られるだろうが、使い勝手での優位性は当面他の追随を許さないからだ。

今回、頭脳である中央演算処理装置(CPU)は、英ARMと共同開発する手法を採用した。世界で普及するARM仕様は汎用性が高く、結果として多数の企業や研究機関がアプリ開発に参画できる。京のCPUが独自開発にこだわったことで、その後の仲間作りに苦労した教訓が生かされた。

富岳は21年に本格運用するが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、前倒しで試験利用を開始。飛沫(ひまつ)の浮遊状況のシミュレーションや治療薬候補の探索に役立てられている。

富岳の名称には、富士山のように裾野を広げて、人類の幅広い課題解決に役立てたいという思いが込められている。その名にふさわしく、真に役立つスパコンとして貢献を期待する。

(2020/6/24 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

シッカリ学べる!3DAモデルを使った「機械製図」の指示・活用方法

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

技術士第一次試験「建設部門」受験必修キーワード700 第9版

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

モノづくり現場1年生の生産管理はじめてガイド

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン