社説/中小企業と地域連携BCP 団結力で豪雨災害に立ち向かえ

(2020/8/12 05:00)

従来の方法では対処できない気象災害が頻発している。中小企業では地域連携による事業継続計画(BCP)が有効な解になる。団結力を強みに気候変動リスクへの備えを急ぎたい。

2019年10月の台風19号で下野毛工業協同組合(川崎市高津区)加盟60社のうち22社が浸水被害にあった。工場1階が泥水につかり、機械や資材が使用不能になった企業もある。原因は多摩川の水が排水路から支流に逆流してあふれる内水氾濫。雨量が想定を超え、降雨時に「排水路の水門を全開する」マニュアルが逆効果になった。

川崎市は再発防止のため、同組合はじめモデル事業を複数選定し、地域連携BCPの策定を支援する。本年度から3カ年計画で効果測定まで持ち込む。

地域連携BCPは、各社のBCPの類似点を集約化して、個社の投資額を抑制できる利点がある。川崎市は共同倉庫での災害物資備蓄、非常用電源・通信設備の共有化、災害時の情報収集・連絡手段の構築、工場設備の融通などを進める。

中小企業が結束すれば、設備補修や物流など外部業者との交渉力も増す。外部業者からみて優先順位が高まり、スケールメリットを背景に復旧費用全体の削減が期待できる。

地域連携BCPが機能するには、官民双方の課題解決とともに、両者の連携力を高める工夫が必要だ。川崎市は水門の開閉を手動式から遠隔操作も可能な電動式に替えたが、組合は「生のデータと現場目線による判断が重要」として、観測点や監視態勢の強化を要望している。市には未曽有のリスクも想定した対策の改革を求めたい。

組合各社の自助努力も欠かせない。自社のBCPが未整備な企業もあり、地域連携BCPへの参加で組合内の「温度差」を小さくしたい。経営者が災害時の意思決定を模擬体験し、対策の不備を可視化できれば自主性を高める動機付けになろう。

官民連携で独自の警戒レベルを設けて対策を共有し、いつでも発動できるようにしておくことが有効だ。地域連携BCPの模範となることを期待する。

(2020/8/12 05:00)

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