日本防災産業会議/第5回通常総会 コロナ、風水害、地震…複合災害に備える

(2020/8/13 05:00)

日本防災産業会議(事務局=日刊工業新聞社)は7月20日、都内で第5回通常総会を開き、2019年度の事業・収支報告と20年度の事業計画・予算案を審議、承認した。地震などに加えて近年頻発する風水害、今般の新型コロナウイルスなど感染症といった、深刻化する「複合災害」に対応したイノベーション促進を、今後の事業の核とする。防災産業技術研究所など関係する外部機関や会員間の、連携・情報共有も促進する。

普及啓発や情報発信強化

会場では距離を保ちつつ、リモートで参加した会員も多数いた

今回の総会は会場での参加のほか、ウェブを通じたリモートで審議に加わった会員も多数あった。19年度の活動としては国などが開催した南海トラフ巨大地震を想定した大規模津波防災総合訓練(和歌山県)への参加や、防災産業展におけるシンポジウム、会員企業の出展といった、情報発信活動が目立った。防災に役立つ技術や製品を登録して発信する防災営業支援ツールの活用についても、トライアルが繰り返された。

既に活動を進めている20年度は、やはり新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、方針を大きく見直す。ここ数年、従来の地震などへの対応に加えて、頻発する風水害への対策を強化し、同時発災も想定する必要性が高まっているが、今年に入り感染症対策が一気にクローズアップされ「複合災害」への対応が求められるようになった。当会も会員企業を含めた感染症ハザード対策の促進や、普及啓発のための講演会開催やヒアリング実施、分科会活動を通じた新たなイノベーションに取り組む。

会員の災害情報共有を促進

会員企業からは自社に限らず新型感染症対策に資する技術・サービスについての情報が寄せられている。当会および会員が支援するなどして、新たなビジネスチャンス創出にもつなげていく。また、当会の持つネットワークを活用して官民の連携を促進し、国や自治体、産業界に対する提言活動も積極的に行っていくべきだという議論も進んでいる。

具体的には、防災科研の協力を得て、会員企業数社に拠点の災害情報をウェブ上のフォームに入力してもらい情報を共有する、災害情報共有訓練を実施しており、今後も継続し情報共有を拡大する。

また、リアルタイム地震被害情報のコンテンツ拡大について、取出新吾防災科研総合防災情報センター長補佐が災害対応に伴いリモートで参加して発表した。取出センター長補佐は「民間企業を会員とする日本防災産業会議側からの情報提供を促進してほしい」と要望した。

防災・減災のコンセプトを大きく転換

日本防災産業会議会長 相澤益男氏

新型コロナウイルス(COVID―19)のパンデミックで世界は一変した。今回のパンデミックには大きな特徴が二つある。第一に、グローバル時代における人類の経済社会活動が全面的に封鎖されたということ。日本では「密閉」「密集」「密接」という「三密」を避ける感染対策が、非常事態宣言の解除後においても続いている。

第二に、ウイルスに対しては、撲滅よりも共生が重要だとの共通認識が高まったこと。歴史を振り返っても、ウイルスの撲滅に成功した例は天然痘以外にない。特に、COVID―19の生存戦略はしたたかであることが明らかとなってきた。息長くウイルスとの共生を前提にすべきだ。

日本は自然災害多発の国である。日本防災産業会議は、地震、噴火、豪雨、台風等、多様な自然災害を俯瞰(ふかん)した「ソリューション・マップ」を作成し、防災産業を振興するとともに、国としての防災・減災力の向上に貢献してきた。今こそ「ウイルスとの共生」を前提とした「複合災害の防災・減災」に大きくシフトすべき時であろう。この意義はきわめて大きい。単に感染症防止策を備えることに留まらず、これまでの防災・減災のコンセプトを転換する絶好の機会であると捉えるべきだ。

過日、集中豪雨が熊本地方を襲い、甚大な災害が発生した。その際、開設された避難所ががらりと変わったことにお気付きの方も多いのではないか。ソーシャルディスタンシングを考慮した、段ボール製の間仕切りとベッドが導入されたのである。従来と比べ収容人数は少なくなるが、まさしくウイルスとの共生を前提とした複合災害対応といえよう。一方で、何が何でも避難所に行くのでなく、ホテルを活用する考えも出てきたとも聞く。要は、避難所のコンセプトそのものに変容が見られるのである。

今回のコロナ危機に直面し、各企業でもさまざまな議論が進んでいるのではないか。防災・減災について、発想の転換が求められているのではないか。「情報基盤」「モノ・技術・サービス」、各分科会においてもさまざまな課題が導き出されるのではないか。こうしたことがニューノーマルを生み出し、社会の変容につながると考える。日本防災産業会議としては、コロナ危機を大きな転換点と捉え、ウイルスとの共生を前提とした「複合災害の防災・減災」を高く掲げ、これから勢いをつけて活動を続けることとしたい。

講演

複合災害BCP(既存BCPのブラッシュアップ)

MS&ADインターリスク総研 リスクマネジメント第四部事業継続マネジメントグループ長 坂井田 輝氏

事業と戦略見直す好機

当社は保険会社を中核とするグループにおけるリスクマネジメント専門のコンサルティング会社である。日本企業を取り巻くリスクの現況を考えると、コロナウイルスの感染拡大に目が行くが地震のリスクは全く減っていない。水災は明らかに増えている。地震、水災ともハザードマップの活用が非常に重要だ。

新型感染症、特にコロナウイルスは、もちろんまだわからないことが多い。それでも、感染防止対策を取り、距離を保つなどすれば感染確率をぐっと下げられることなどがわかりつつある。

人類は過去からずっと感染症と戦ってきた。19世紀のコレラから公衆衛生の概念が生まれたように、新たな社会構造を生み出してきた。今回もテレワークなど以前からやるべきだと考えていたものが、2、3カ月であっという間に広がった。社会の変容をぐっと進める効果が感染症にはある。

今回は複合災害BCP(事業継続計画)がテーマだが、BCPは災害時の業務レベルの落ち込みをできるだけ少なくし、復旧を早める計画を文書化したものだ。策定している企業でも多くの場合、地震、水災、新型感染症とBCPを別個に作っていても同時発災を考えていなかった。それぞれの事態に対してしっかりとした計画を立て、連関させながら対応を打つ。見直すべきところはブラッシュアップしておく。

それぞれの災害の特徴を見ると、まず地震は予知できず突発的だが、風水害は一定の予測ができる。感染症は徐々に蔓延(まんえん)化する。地震・風水害は復旧時期を想定できるが、感染症は収束時期がわからないことがやっかいだ。被害の影響範囲も地震は局地的、水災は地震より若干広いが局地的である一方、感染症は世界に広がり代替地区での生産・営業も難しい。事業継続も地震・水災は早期復旧を目指すが、感染症は感染段階に応じてレベルを決める。自然災害に対するBCPは事業を復旧するプロセスだが、感染症のBCPは事業を縮小するプロセスでもある。

地震と感染症が同時発災した場合、地震の初動対応で「三密」が発生しやすい。初動期の対応を見直すことが必要だ。被害が広がる少し前に予測可能な水災と感染症が同時に発災する場合は、タイムラインを切り段階的な対策を練っておく。

ウィズコロナの時代にやらなければならないのは、まず感染予防策の徹底と正確な情報収集。そして今までの活動を振り返り、次に備えてBCPを見直して、強靱(きょうじん)な企業を作る。BCPは災害対策と考えると後ろ向きの活動と見られがちだが、会社全体の事業と戦略を見直すという点で、前向きに捉えることもできる。ピンチであっても新しい事業、業務が新しい世界で生かせるという、ビジネスチャンスが出てくるはずだ。そのように考えて、ぜひBCP策定・見直しにチャレンジしていただきたい。

(2020/8/13 05:00)

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