社説/女性登用の遅れ “無意識の偏見”認識し、改善を

(2020/8/25 05:00)

女性や外国人など少数派に対する露骨な差別が組織から消えても、根強く残るのが無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)だ。「分け隔てなく」「扱いは同等」といった言葉に隠れた、偏見の放置に気をつけたい。

アンコンシャスバイアスとは、意識せず身に付いた思い込みや偏見を指す。ダイバーシティー経営の先端的な現場では近年、話題となっている。

企業の女性活躍推進をリードするジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク(J―Win)の内永ゆか子理事長(元日本IBM専務)は、その一つとして「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に注目する。

伝統的な組織の多数派男性の間で共有されてきた、暗黙のルールや人間関係を指す。居酒屋など非公式での情報交換や裏での調整などで、男性は若い頃からルールを吸収していくが、女性はカヤの外にある。

内永さんは課長職のころに「正当な論理で説明するよりも、相手を立てながら意見するのが大切」という暗黙のルールに気づいたのをきっかけに、組織を動かす力を身に付けた。しかし一般に少数派はこのことに気づきにくい。孤軍奮闘するも周囲から浮き、結果的に昇進の機会からはずれてしまう。

世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は153カ国中121位の低位だった。内閣府は指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%にするとの目標を、「20年代の可能な限り早期に」と先送りした。このままでは世界との格差はさらに広がりかねない。

女性は男性より昇進意欲が低い、という言い方もされるが、それは早い段階から仕事を任される経験が少ないこととも関連している。

女性が社会で能力を発揮し、それに見合った地位や所得を得ていくことが、人口減少、デフレという社会課題の解決でも欠かせない。アンコンシャスバイアスの実態を認識し、改善に取り組む姿勢が、持続可能な社会の形成につながっていく。

(2020/8/25 05:00)

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