5Gソリューション

(2020/10/19 05:00)

業界展望台

第5世代通信(5G)の国内サービスが3月に始まり、ワイヤレステクノロジーが大きく成長しようとしている。超高速・超大容量・多数同時接続・超低遅延を実現し、さまざまな産業の需要増加に期待が高まっている。新政権では「デジタル庁」創設を政策の一つに掲げている。また、5Gを地域限定で用いる「ローカル5G」の実証実験も加速している。

“ローカル5G"成長予測

5GサービスはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が3月下旬からスタート。楽天モバイルは9月30日からサービスを始めた。

5Gは現行の4GのひとつであるLTEと比べて、データ通信速度は約100倍となる1秒当たり10ギガビット、伝送時の遅れは10分の1となる1ミリ秒を実現する。2時間映画のダウンロードにかかる時間は5分必要であったのが3秒で済み、4K映像の受信も可能だ。

多数同時接続は1平方キロメートル当たり100万台。超低遅延のためリアルタイムに建設機械やロボットなどの遠隔操作が可能で、屋内外の家電やセンサー、自動車などあらゆる機器が接続しIoT(モノのインターネット)環境を構築する。

こうした5Gのテクノロジーは新しい産業やサービスを創出するとして期待が高まっている。地域の企業や自治体など通信事業者以外が自らの建物内や敷地内でスポット的に5Gのシステムを柔軟に構築できる「ローカル5G」だ。

  • ローカル5Gの概要

ローカル5Gは高度なセキュリティー性と通信の安定性も高いというメリットから、これまで無線化が進んでいなかった工場や農場、建設現場やイベント会場、病院などで導入が期待されている。IoT機器としてはロボットやドローン、自動車の自動運転、5Gの特徴や人工知能(AI)を生かした工場内でのAGV(無人搬送車)などが需要をけん引し、ソリューションサービスとしては製造分野向けが需要を伸ばすと期待されている。

調査会社の矢野経済研究所(東京都中野区)は売上高ベースによる2024年度のローカル5Gソリューション市場を300億円、25年度は470億円に成長すると予測する。

ローカル5Gネットワークを構築するシステムやアプリケーション開発費、通信モジュール、端末/デバイス、電波利用料/回線利用料・通信費、プラットフォーム/クラウド利用料、運用管理費などを対象として、ハードウエア、ソフトウエア、サービスなどを提供する事業者の売上高ベースで算出している。ただし、ローカル5Gネットワークのインフラ設備(基地局など)の費用や工事費は含んでいない。

3Gサービスの中止などを背景に、これまでの通信規格を利用したIoTソリューションシステムが、24年度頃から5GによるIoTソリューションに置き換わると分析。25年度は5Gを活用したIoTソリューション市場の約10%が、ローカル5Gのネットワークを活用したシステムになると見込んでいる。

ローカル5Gの利用には国で指定された免許の取得が必要だ。総務省は19年12月24日から申請受け付けをはじめ、今年3月27日に国内初となるローカル5G用無線局の免許を富士通に付与している。

  • ローカル5Gソリューション市場規模予測

総務省の20年情報通信白書では新型コロナウイルス収束後の社会に向けて、5GなどによるIoTソリューションはこれまで以上に重要になると捉える。

ローカル5Gの基本コンセプトは(1)5Gを利用していること(2)地域においてローカルニーズに基づく比較的小規模な通信環境を構築するものであること(3)無線局免許の自ら取得も、免許取得した他者のシステムを利用も可能であることの3項目を示している。無線技術やネットワーク技術などについて専門的な知識のない利用者や地域の企業らにこそ、多くの潜在的なニーズがあることを想定。それらのニーズにローカル5Gは細やかに応えていく必要があることが挙げられる。

ローカル5Gの円滑な普及には、地域の通信事業者などが地域特有のニーズをくみ取りながら、個別のニーズに応えるためのネットワークを構築することが大切だ。

デジタル変革、広がる用途

こうした中、新型コロナ感染拡大で社会全体のデジタル化が不可欠になった一方、各国と比べて後れを取る実情が表面化した。デジタル庁の発足は関連施策を一元化する体制を築き、デジタル変革(DX)加速や5G普及などをビジネスでの生産性向上や効率化にとどまらず医療、教育などあらゆる分野への広がりを視野に入れる。

電機大手はローカル5Gを活用したIoTソリューション開発に乗り出している。三菱電機は神奈川県内に「5Gオープンイノベーションラボ」を21年3月に開設。日立製作所と東芝は主要拠点でローカル5Gの免許を取得して実証を始める。製造現場の高度化などの用途開拓を目指す。

また、DMG森精機は製造現場におけるローカル5G活用に関する実験を行っている。人と協働するロボットを搭載したAGVの遠隔操作と、工作機械の切りくず除去技術の高機能化の有効性や実現可能性を検証している。実証をもとに高性能のAGV開発や新サービス開発につなげ、顧客の自動化ニーズを取り込む。

さらに、同社は5GやAIを用いたDXに関する研究開発や工作機械の要素技術などの実証実験も行う研究開発拠点「奈良商品開発センタ」を、JR奈良駅前に新設し、22年春の開所を予定している。

総務省が9月29日に発表した21年度予算概算要求は、一般会計総額で20年度当初予算比0・3%増の16兆8263億円となった。5Gの次の世代「ビヨンド5G」(6G)の研究開発促進に70億円を新規計上し、ローカル5Gを用いた地域企業などの問題解決の促進には65億円を盛り込んだ。6Gの国際標準の策定過程に日本が深く関与し国際競争力を高めるのが狙いと考えられる。

NTTドコモは6Gに関して、30年頃の導入を見込んでいる。通信速度は5Gよりも10倍速い100ギガビット超を想定する。6Gの世界ではメガネ型端末の進化で、現実の体感品質を超えるような仮想世界でのサービスを提供できるようになると考えられている。

(2020/10/19 05:00)

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