社説/コロナ下の税制大綱 デジタル化推進には力不足だ

(2020/12/11 05:00)

与党の2021年度税制改正大綱がまとまった。新型コロナウイルス感染症による経済活動の低迷で税収減が見込まれる中にあって、脱炭素社会の実現や、デジタル変革(DX)推進など次世代への対応を盛り込んだ意欲は評価できる。ただ社会変革を促すには不十分ではないか。

改正の目玉として掲げたのがDX促進税制の創設と研究開発税制の見直し。いずれもクラウド利用など従来はカバーしていなかったシステム開発を、税額控除や特別償却の対象とする。

カーボンニュートラルに向け、脱炭素効果の高い先進的な設備投資の減税幅を拡大した。とはいえ、こうした新制度は産業競争力強化法の認定など要件が厳しく、利用する企業は限られそうだ。

コロナ下の緊急対応として産業界が要望した土地の固定資産税の負担増回避は実現した。21年度に予定通り評価替えが行われると、多くの地域で固定資産税が増額になると予想された。地価の高い商業地や、工場・倉庫など広い土地を持つ事業者にとって恩恵は大きい。

同じく産業界の重点要望だった欠損金繰り越しの拡充は、DX推進などの計画を策定した企業に限って認めた。中小企業向けには、経営資源の集約を即時償却や税額控除の対象に加え、企業の統廃合を後押しする。

個別税制では、住宅ローン減税とエコカー減税を、内容を改めた上で延長する。消費の下支え効果を期待する意味で妥当な判断といえよう。特にエコカー減税は、より脱炭素に資する車種にシフトする新たな枠組みを取り入れた。

ただ減税規模は国税全体で500億―600億円程度にとどまる。企業の投資意欲喚起には力不足の印象がぬぐえない。産業界が要望した印紙税全廃など、ビジネスを一新する施策は次年度以降の課題となった。

コロナ下では家計も企業も担税力が低下する。手厚い支援の一方、政府として将来の税負担をどうするかの展望も重要だ。DXの加速で収益力を高める企業を強力に後押しし、税収増につなげてほしい。

(2020/12/11 05:00)

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