社説/電動化と自動車リサイクル 循環経済の視点を採り入れよ

(2021/5/28 05:00)

100年に1度の変革期にある自動車の将来像に、循環経済(サーキュラーエコノミー)の視点を採り入れていくべきだ。

自動車リサイクル法が施行から16年目を迎えた。法施行の根拠となった、シュレッダーダストの不法投棄や放置自動車による環境悪化は、関係者の努力でほぼ解消され、リサイクル率も高い水準が保たれている。

自動車には有用な金属材料が多数使われ、使用済みとなっても、部品や古鉄材料として有価で取引される。ただ、シュレッダーダストなどの破砕残さ(ASR)やエアバッグ、エアコン冷媒のフロン類は、処理に費用が必要で、その費用は車購入時に消費者が負担するリサイクル料金で賄われている。

おおむね順調に推移してきた自動車リサイクル制度だが、循環経済を推進する上で課題を抱える。ASRには多数のプラスチック類や雑品が入り交じり、その多くは焼却され熱回収するサーマルリサイクルで処理される。政府がプラ類の再生利用方針を打ち出すなかで、ASRも熱処理から再生利用へと転換していく必要がある。

経済産業省と環境省は、ASRからプラやガラス類を分別回収するのに必要な費用を支給する制度の創設を検討している。質の高い分別回収を実現する仕組みを考えてもらいたい。

カーボンニュートラルを踏まえた車の電動化加速への対応も必要だ。蓄電池はレアアースなどの材料確保や生産体制の構築など、戦略物資として世界が囲い込みに動いている。争奪戦に巻き込まれないためにも、電池の再利用や使用済み電池から有用材料を取り出して電池に再生する技術を、開発段階から想定しておかなければならない。

軽量化のため炭素繊維強化プラスチックやアルミ合金など、既存の鋼板に比べてリサイクルしづらい材料の利用も増えている。鉄スクラップなどの有価取引が脅かされる恐れもある。

自動車は日本の基幹産業であり、関連企業も多数存在する。循環経済をけん引する役割を自覚し、業界全体が発展する方向へ進む方策を考えていきたい。

(2021/5/28 05:00)

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