産業春秋/砲丸に息づく職人魂

(2021/6/23 05:00)

匠(たくみ)の技から生み出される日本製の砲丸は、世界のメダリストたちを魅了してきた。東京五輪でもトップアスリートの人気をさらいそうだ。

陸上競技用器具専門メーカーのニシ・スポーツ(東京都江東区)は、砲丸で国内トップシェアを誇る。五輪は1988年のソウル大会から公式採用になり、リオデジャネイロ大会では男女とも、金、銀、銅のメダリストが使用した。

一般男子用は重さ7・26キログラム。直径は指の長さなど選手の個人差を考慮して110―130ミリメートルの幅が許される。同社は大中小の3種類を製造する。職人技による緻密な表面仕上げと、重心が球の中心にピタリとそろう加工精度の安定性に定評がある。

かつては球面にらせん状の溝を残す加工を強みとした。「かかりがよく投げやすい」と選手たちから好評を博した。ところがシドニー大会の翌年「表面の仕上げは滑らかとする」が規則に。アテネ大会は「メダルゼロ」に終わる。

規則の範囲内でも手にしっくりなじむ極限の粗さを実現できるはず―。選手の意見をもとに改良を重ね、北京大会では再びメダルに手が届く。東京大会でも多くのメダリストから愛され、モノづくりニッポンの心意気を示してほしい。

(2021/6/23 05:00)

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