モノづくり日本会議/モノづくりの進むべき道 千代田化工建設社長・山東理二氏

(2021/7/28 05:00)

2030年代以降、化石燃料からバイオマスや水素、アンモニアなど新エネルギーへの転換が全世界で進んでいく。千代田化工建設は、オイル&ガス分野を主力とするエンジニアリング専業企業。エネルギーの主軸の変化に合わせた対応が迫られている。エンジニアリング企業の視点を通じた、エネルギー革命やデジタル変革(DX)などについて、山東理二社長に話を聞いた。

水素社会、間違いなく訪れる

モノづくり復活

―モノづくりを取り巻く国内外の情勢をどう見ていますか。

「日本企業は国内マーケットをもう一度見直す時期に入った。日本の技術や、日本人による付加価値のあるモノづくりが、もう一度復活するのではないかと考えている。国内には十分な消費力がある。当社も国産コロナワクチンの製造工場の建設に携わっており、それを実感している。今後、国内企業はこうした日本社会の安全保障につながる仕事も増えてくるのではないか」

―エンジニアリング業界の足元の状況はいかがですか。

「この10―20年の間に、海外で大型プラントを受注してきた。それらのプロジェクトは固定価格で一括請負する、ランプサム契約で行っている。このためどうしてもリスク請負業になり、利益が減っている構造的な問題がある。ただ、現在はエネルギーやデジタル分野で技術革新が進んでいる。エンジニアリング会社には、多様な技術を組み合わせる力がある。研究開発は大学など、あらゆるところから進んでいるが、新しい技術を社会実装できる存在はなかなかいない。これからのエンジニアリング会社には大きな役割を果たす可能性がある」

常温・常圧輸送、独自技術を開発

―国の施策について意見・要望はありますか。

「2020年以降新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起き、健康の安全保障という問題がでてきた。日本政府はもっと迅速に、より主体的に動けていたのでは、と感じる。今回に限らず、日本の施策はまんべんないサポートを重視し過ぎているきらいがある。これから伸びる企業を育てて行くには、メリハリをつけた支援も必要だろう。ひょっとしたら落ちこぼれる企業もあるかもしれない。当社にもその可能性はある。だがみんなが護送船団に乗っていると、ますます世界から置いて行かれてしまうと危惧している」

―カーボンニュートラルなエネルギーの旗手として水素が挙げられています。

「当社は三菱石油(現ENEOS)からスピンアウトした企業で、メーンの土俵はエネルギー産業。この産業はこれから10―20年で大きく変わるが、当社はそこを手伝っていく。また世の中に企業活動で貢献していきたいという強い思いがあり、そのひとつが水素と位置付けている。有機ケミカルハイドライド法を使って、水素を常温・常圧で運ぶ独自の技術を開発している。この水素技術を今後、広めていきたい。水素社会は間違いなく訪れると確信している」

全社一丸

―DXは産業界にどういった効果をもたらしていますか。

「ゲームチェンジャーと見ている。DXはさまざまなバリアーを取り払うし、時には勢力図まで変えてしまう。非常に怖い物ともいえるし、だからこそ取り組む必要がある。ただ我々の建設業界は全体的にDXが遅れており、待ったなしの状態になっている。そのため当社では、全社でDXに取り組む体制を整備している。19年にはデジタルトランスフォーメーション本部を立ち上げた。DXにより社内の効率を向上するほか、デジタルを武器にプラントの稼働率を上げるシステムも提供している。サステナブルな収益が期待できる」

―人材育成で求められていることは何ですか。

「個人的にはまず、女性や外国人を積極的に登用していくべきだと感じている。今の状況では、まだ十分にできていない。グローバル化が進行していることから、外国人がマネジメントに入ってくるようにしていく。若手については複数の職場を経験する『キャリアパス』をしっかり取り入れて行くべきではないか」

(2021/7/28 05:00)

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