社説/菅首相不出馬退任へ コロナ・経済対策に猶予はない

(2021/9/6 05:00)

「国民のために働く」。菅義偉政権が掲げた言葉は最後まで国民に届かなかった。コロナ禍と経済再生には一時の猶予も許されない。国民が見たいのは、政争ではなく具体的なコロナ対策である。

菅首相の自民党総裁選への不出馬表明を受け、3日の東京証券市場の株価は大幅上昇した。これが菅政権の評価を如実に示している。

コロナ対策で失政を重ねたのが国民の信頼を損ねた最大の要因である。ワクチン接種を進める方針は間違ってはいない。しかし接種の予約、供給などさまざまな場面で目詰まりが生じ、国民の不満を高めた。新規感染者が急増し、自宅療養を余儀なくされる患者が急増する中で有効な対策が示されない状況に、国民の不安はピークに達した。

緊急事態宣言が発令されるたびに菅首相は会見に臨んだが、その言葉には国民を納得させ、行動をとらせるだけの説得力が欠けていた。国のリーダーに求められる資質は、危機にある中、国民の気持ちを一つにまとめる強い指導力であることを痛感させた。

菅政権はこの1年間で、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)やデジタル庁創設など、10年、20年先のイノベーション創出につなげる決断をした。また、批判がある中でも東京五輪・パラリンピックを大きな事故なくやり遂げたことは、国際社会に評価されることだ。

しかしコロナ禍で露呈したさまざまな課題の大半は積み残されている。変異株が次々に流入する中、当面はウィズコロナの時代を生きることになる。医療の逼迫(ひっぱく)にどう取り組むかが最重要のテーマである。

同時に傷ついた経済の再生を図らなければならない。コロナ倒産は2000社に達したが、これは氷山の一角に過ぎないことは明らかだ。

苦難の道は続くが、改革を止めてはならない。総裁選が間もなく始まる。新しいリーダーは、国民に厳しい現実も率直に示し、理解を得、共に行動する人が選出されることを切に願う。

(2021/9/6 05:00)

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