リチウムイオン電池材料と計測器・製造装置

(2021/10/19 05:00)

業界展望台

リチウムイオン電池(LIB)はエネルギー密度や出力密度が高く、繰り返し(サイクル)寿命が長いなど優れた特徴を持つ。電気自動車(EV)市場の拡大に伴い、EVに搭載するLIBの研究開発の加速と需要増に期待が高まる。LIBの生産を支える電池部材メーカーは生産増強を図る一方、計測器や製造装置メーカーはこれまでの経験とノウハウを生かして電池市場の拡大を目指す。

安全性や高出力、長寿命 高性能ニーズに対応

LIBは安全性や高出力、長寿命など高い性能が要求される。EVやプラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)などの電動車(xEV)はLIB需要をけん引する市場の一つとして注目されている。

日産自動車と三菱自動車は共同開発している軽EVを2022年度初めに国内で発売する。満充電当たりの航続距離は170キロメートル前後を予定し、日常での利用に十分な能力を確保したとしている。電池容量は20キロワット時。本体価格から補助金を差し引いた実質購入価格は約200万円からと見込んでいる。

トヨタ自動車は車載電池の開発・生産で30年までに約1兆5000億円を投資し、生産能力を30倍以上引き上げるほか、新型のLIBを20年代後半に投入する計画を打ち立てた。投資のうち約1兆円を生産ラインの増強に振り向け、現状6ギガワット時の生産能力を30年に200ギガワット時以上にすることを想定している。EV向けに25年までに10本程度の生産ラインを設置し、以降は年10本以上のペースで増設を進める。30年までに計70本程度を予定している。

テスラなどのEV生産拡大や欧州の環境規制強化などを背景にxEV市場は拡大。それに伴うLIB需要大幅増を背景に、富士経済はxEVの駆動用電池として用いられる世界のLIB市場は23年には5兆円に達し、24年には20年見込み比約2.6倍の6兆7403億円を予測した。

20年はxEVの生産台数の低迷により19年比で横ばいとなるものの、各国がxEV普及の支援政策を打ち出していることから、21年以降の市場は拡大すると見込む。

中国ではxEVの補助金政策の終了を20年末に予定していたこともあり、先行して補助金額が徐々に減額されEVやPHVの販売台数が減少傾向にあった。しかし、補助金政策が22年末まで延長するほか、規制による低燃費車への優遇措置によりxEVの需要が回復している。

米国ではカリフォルニア州のように排出ガスを出さないゼロエミッション車(ZEV)規制とEV購入に対する税額控除でxEVの需要が増加している。カリフォルニア州などで適用されるZEV規制は一定台数以上の自動車を販売するメーカーは、販売台数の一定比率をZEVとすることが求められる。

欧州は企業単位で販売車両の二酸化炭素(CO2)の排出量平均値を算出し、定められた基準以下にすることが要求される。このCO2排出規制ではxEVの車種は限定されないため、それぞれのメーカーが強みのある車種で比率を高めておりLIBの需要も伸びている。

こうした中、台湾大手計測器メーカーChromaATEは日本市場と日本ユーザーの要望を重視した製品開発を行っている。日本法人のクロマジャパンではEVおよび電池測定市場を中心に国際電気標準会議(IEC)や国際標準化機構(ISO)、米UL、中国GB/Tなどの国際規格に準拠したバッテリー評価試験装置の引き合いが活発になっている。

LIB材料市場 EV向け需要増

LIBは正極材、負極材、セパレーター(絶縁材)、電解液の主要4部材と、正極・負極バインダー、正極・負極集電体、外装材などで構成される。

EV向けや電力貯蔵システム(ESS)向けなど大型のLIBの需要増に伴い、材料市場も拡大している。富士経済がまとめた24年のLIB材料の世界市場は20年見込み比約2.3倍の6兆7802億円を見込んでいる。今後もEV向けなどを中心にLIB需要の拡大を予測している。

仲代金属の「鏡面切り加工技術」は、業界内の課題である軟質極薄広幅製品の二次線や巻シワ、エッジ部のソリ返りがない。

ニレコは電極材シートや巻物状になっているウェブの搬送から計測、検査までを総合的に行うメーカーとして、生産現場の需要に期待している。

こうした中、計測器や製造装置メーカーなどは世界的なLIB普及と拡大に向けて、ユーザー要望に応え国内外で存在感を示している。

12月12日は「バッテリーの日」 11月11日は「電池の日」

「バッテリーの日」は1985年に日本蓄電池工業会(現・電池工業会)が「カーバッテリーの日」として制定し、91年に「バッテリーの日」に名称を変更した。野球のバッテリーではピッチャーのポジション番号が「1」、キャッチャーの番号が「2」で、1と2が組み合わせられることから12月12日を「バッテリーの日」に制定した。

また、電池の正・負極を表す+(プラス)と-(マイナス)から、11月11日を「電池の日」として86年に制定した。この電池の日からバッテリーの日までを「電池月間」に定め、電池の正しい使い方や安全な使い方などを考える期間としている。

(2021/10/19 05:00)

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