社説/GDP、2四半期ぶり減少 実効性ある経済対策が必要だ

(2021/11/18 05:00)

緊急事態宣言が全面解除されて1カ月半、店舗の営業制限緩和を受けて飲食、宿泊などのサービス業を中心に消費が回復しつつある。だが、まだコロナ前の水準には遠く及ばない。経済の正常化には、着実なコロナ対策と消費の刺激策が必要だ。

2021年7―9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、年率換算で3・0%減と2四半期ぶりで減少した。GDPの過半を占める個人消費が夏場の緊急事態宣言の影響をもろに受けて伸び悩んだことが主因。東京五輪・パラリンピックも消費押し上げには至らなかった。

輸出は半導体不足や東南アジアからの部品調達難で自動車輸出が大幅に落ち込んだほか、中国経済の減速で対中輸出が低迷し、大幅減少となった。輸入も減少したが、輸出の減少幅が大きく、外需寄与度がマイナスとなり、GDPを下押した。

10―12月期は、コロナ禍が落ち着くにつれてリバウンド消費の拡大が期待され、GDPの増加が予想される。自動車も東南アジアでの部品調達が進み始めており、プラスに働きそうだ。

一方でエネルギー価格の高騰と為替の円安が懸念される。年末商戦期の価格上昇は、消費意欲低下や企業マインド悪化を招き、景気の足を引っ張る可能性がある。現状ではコロナ前水準に戻るのは難しい状況である。

政府が近くまとめる経済対策は、そうした危惧を払拭(ふっしょく)し、「成長と分配の好循環」を推進するものとなるべきだ。

コロナ対策としては病床確保とワクチンの3度目接種を着実に進め、感染が一定規模で拡大しても休業や時短をしなくてすむ仕組みが必要だ。

政策のもう一つの柱である生活困窮世帯や18歳未満の子どもがいる世帯への給付金支給や、賃上げを実施した企業への優遇税制の拡充は、導入効果を見通して導入すべきだ。現金支給は貯蓄に回され、消費刺激効果は小さいとの指摘がある。中小企業の多くが赤字の状況では、税制優遇効果も小さい。

政府は経済政策に工夫を凝らし、実効性のあるものにする必要があろう。

(2021/11/18 05:00)

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