社説/機能不全の国際機関・会議(上)国連改革、小さな一歩も前進を

(2022/4/19 05:00)

 国連の機能不全が鮮明だ。ロシアのウクライナ侵略を非難する安全保障理事会の決議案も、ロシアが常任理事国の地位を利用して拒否権を行使すれば廃案となってしまう。日本政府は拒否権を行使した常任理事国に総会での説明を義務付ける議案を他の加盟国とともに共同提案する。小さな一歩だが、新たな国際秩序の形成に向けた議論を前進させたい。

 自民党は14日、国連改革を促す提言を岸田文雄首相に提出し、首相は共同提案に加わることを決めた。自民党の提言によると、日本やドイツなど第二次世界大戦の敗戦国を対象にした「旧敵国条項」を削除することも首相に要望したという。

 日本政府は、常任理事国入りを含む安保理改革を推進する方針を示している。中・仏・露・英・米の5常任理事国は既得権を死守するとみられるが、日本は国際秩序の再構築を訴える外交努力を積み重ねてほしい。

 ロシアのほか、拒否権行使で懸念される常任理事国が中国だ。東・南シナ海への海洋進出・領有権問題や台湾有事が国際秩序を脅かす可能性を払拭(ふっしょく)できない。拒否権行使の説明責任を求めることで、多少なりとも行使の抑制に結びつくことを期待したい。

 米中対立を軸とする「新冷戦」は貿易戦争の色彩が濃い一方、ロシアのウクライナ侵略は民間人も大量虐殺する戦争犯罪だ。新冷戦のフェーズが領土・人権へと大きく転換したと言っていい。東西冷戦後はイデオロギーを超えて各国はグローバル経済を推進してきたが、それが保護主義の貿易戦争、さらに武力による国境変更へと平和秩序が著しく脅かされるに至った。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は5日の国連安保理会合でビデオ演説し、ロシアのウクライナ侵略に直ちに行動を起こさないのなら「国連は解体すべき」だと訴えた。かねて機能不全に陥っていた国連はその存在意義さえ問われ始めている。

 だが、国連を解体しても物事は何も解決しない。国連機能の一部からでも再生させる各国の決断・行動力が求められる。

(2022/4/19 05:00)

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